ニューノーマル時代を支えるIT技術

 

ニューノーマル

 

ニューノーマルとは元々、世界金融危機と大景気後退の後、以前のような経済状況には戻らなくなり、別物の経済が当たり前になったことを意味する言葉として使われてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症によって生活の在り方が急変した2020年現在、ニューノーマルは非対面型サービスへの取り組みなど新たな生活様式への移行を意味する言葉として通用されています。一方、デジタル化も急速に進み、IT産業や技術はここ1年間目立つ速度で成長してきました。今回は「ニューノーマル時代」に様々な分野で活用される非対面型サービス、またその基盤となるIT技術をまとめてご紹介いたします。

 

1.テレワーク :Web会議ツール

テレワークの普及によりテレワークツールの活用率も高まっています。特に距離と場所、デバイスを問わず使われるZoom、HangoutなどのWeb会議ツールへのニーズが増えています。Web会議ツールは仕事だけではなく、オンライン飲み会等、日常生活においても幅広く使われています。 MM 総研の「SaaS・コラボレーションツール利用動向調査」によると、2019年12月末に44%だったWeb会議システム利用率が2020年末には63%に急増しました。

非対面で人々との仕事や飲み会等が可能になったのはWeb会議ツールに搭載されているWeb RTC (Real Time Communication) 技術にあります。Web RTCとはリアルタイムコミュニケーションを支援するプロトコルとして、オーディオとビデオを録画、連結、伝達等の機能を果たします。

 

2.非対面金融サービス:フィンテク

脱現金化は2019年消費税増税対策として導入されたポイント還元対策から始まりました。さらに、コロナをきっかけに店舗での支払いの際に店員と客の接触を必要としないキャッシュレスへのニーズが増加し、脱現金・キャッシュレスが日々の生活に必要不可欠なものとなっています。脱現金化の傾向はモバイル金融アプリ利用推移からも確認できます。AdjustとApptopiaのレポートによると、スマホ決済アプリの平均インストール数は75%、バンキングアプリのインストール数は142%増加しました。

これらの金融サービスの基盤は金融とITを組み合わせたフィンテク技術です。フィンテク と言えば、かなり専門的な知識が求められるのではないかと思われるかもしれないですが、 「メルペイ」や「ラインペイ」等バーコード1つで簡単に支払いできる決済システムなど、実は我々の生活でよく使われている技術の1つです。また、自動的に個人の信用スコアを算出し、貸付金利と利用可能額を決定する融資サービス「LINEポケットマネー」もフィンテクが基盤となっています。

 

3. 非対面医療サービス:オンライン診療

コロナ拡散の後、非対面型医療サービスは院内での二次感染を警戒する患者のニーズが増え、2020年オンライン診療を導入している医療機関はおよそ1万ヶ所を上回っています。オンライン診療は予約から問診、診察、決済、処方せんや医薬品の配送手続きまでオンライン上で行われます。これらの過程をオンラインで完結させるアプリケーションも登場し、オンライン上の医療サービスの利便性を高まっています。

また、集中患者治療室でも遠隔管理システムを通じてオンライン診療ができます。このシステムは患者の電子カルテや生体情報といったデータを集約し、退室予測値の算出や治療に必要なデータを解析するなど、臨床現場の意思決定を支援します。

これから先の非対面医療サービスは、5G(第5世代移動体通信サービス)に対応し、患者に対してより迅速で正確性高い治療ができると予測しています。

 

4. Eコマース:販売チャネルのデジタル化

コロナによる緊急事態宣言と外出自粛の影響でオフラインでの消費が減少したのに対し、Eコマースの利用率は大幅に増加しました。 SBI証券の「Monthly trend report」によると、Eコマース大手の楽天、Zホールディングス、メルカリの売り上げは2020年4~6月の前年同期比で平均40%近く増加しています。

コロナ拡散の以前から持続的に成長を続けていたEコマースは特に伝染病が流行すると更に盛んになる代表的な業種です。 2003年、中国企業のアリババは、SARS重症急性呼吸器症候群)が流行った当時、従業員が確定診断を受け、業務に影響された経験があります。 この時マーウィンは根本的な事業構造の変化が必要だと考えてオンライン市場に主力した結果、今の中国代表Eコマース、「アリババ」が誕生しました。

アリババの事例のように、ショッピング産業では販売のデジタル化を進んでいる様相が見られます。 ライブコマースのようなオンラインニューメディアやバーチャル店舗を活用した販売方式が、Eコマース市場の新しい販売プラットフォームとして浮き上がれると予測できます。

 

最後に

コロナをきっかけに様々な産業において非対面型サービスの導入が進まれています。このような非対面型の生活様式が私たちの日常の一部になるとしたら、これからもデジタル化、IT技術の重要度は持続的に高くなるはずです。

一方、多くのセキュリティ専門家は非対面サービスの増加によってITインフラへの依存度が高まり、サイバー脅威の可能性も高まっていると指摘してます。今年、金融サービスやEコマースで不正利用、顧客の個人情報漏えいなどの被害が相次いで発生していることを見ると、より強固なセキュリティ対策を備える必要性を実感できます。伝染病の脅威から安全になるために始まったニューノーマル時代に直面した新たな課題は、サイバー攻撃からの安全確保だと言えるでしょう。