走行中によそ見もOKな自動運転車「LEGEND(レジェンド)」が世界で初めて市販、これからの自動運転車の動向

コネクテッドカー・セキュリティ アウトクリプト

日進月歩で進化を続ける自動運転技術ですが、ハンズフリー運転を可能にする高度な自動運転レベル2(部分運転自動化)搭載車が続々と市場に投入される中、2020年に国内で改正道路交通法などが施行され、アイズフリーが可能となるレベル3(条件付運転自動化)も解禁されました。そして今年3月、本田技研工業(ホンダ)は、世界で初めてレベル3で型式認定を取得した自動運転装置搭載の新型「LEGEND(レジェンド)」を、3月5日に発売しました。今回は日本を含む世界の各メーカーや各国における自動運転の開発・導入状況や動向などをお届けしていきたいと思います。

引用:アウトクリプト

 

走行中DVD鑑賞も可能な自動運転レベル3とは

レベル3自動運転車 ホンダ レジェンド

honda レジェンド_ペンタセキュリティ

引用;トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能) エンジニアトーク | Honda

自動運転レベル2ではドライバーの監視義務は残り、前方を注視していなければなりません。ドライバーを監視するカメラが前を向いているか、目を閉じていないかを常時チェックし、よそ見をすると機能がキャンセルされるようになっています。しかし今回世界で初めて発売されたレベル3のホンダが発売するラグジュアリーセダン レジェンドは、走行中目を離しDVD鑑賞も可能な自動運転車です。

 

今回発売された自動運転装置搭載グレードの「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」は、リース専用車種で価格は1100万円、100台の限定生産となります。レジェンドが搭載する「HONDA SENSING Elite」は、これまでホンダ車が搭載してきた安全運転支援システム「Honda SENSING」の発展版となります。衝突軽減ブレーキやクルーズコントロールといった従来の機能に加え、限定領域で自動運転を実現する「レベル3」の自動運転機能を持っています。

 

2020年11月、ホンダは「レベル3」の自動運転に必要な国土交通省の型式指定を世界で初めて取得しました。レベル3とは、国が定める自動運転の定義のうち「一定の条件下でシステムが周辺の交通状況を監視するとともに運転操作を代行します。システムが使用可能な条件から外れる場合は、警報を発して直ちにドライバーに運転交代をすることが求められます」というものです。レベル2の運転支援では必要だったドライバーの監視義務がなくなります。レジェンドの場合、自動車専用道路にでてセットしてしばらくすると「ステアリングから手を離すことができます」という案内がでます

 

アイズフリーで走行できる条件は(1)高速道路であること。(2)精密地図のある区間であること。(3)先行車がいること。(4)車速30km/h以下であること(30km/h以下でセットすれば上限50km/hまで稼働する)の4点です。これは高速道路の渋滞時をイメージしているため、ホンダによる正式名称は「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」と呼ばれます。国土交通省では、レベル3以上の自動運転車両が満たすべき安全性について、「合理的に予見される防止可能な人身事故が生じない」こと、つまり自動運転車が自ら事故を引き起こさないことを求めています。

 

日本の国土交通省による自動運転レベル3の定義

  • レベル0:自動運転を実現する運転自動化技術が何もない状態。
  • レベル1(運転支援車):アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらが、部分的に自動化された状態。
  • レベル2(運転支援車):アクセル・フブレーキ操作またはハンドル操作の両方が、部分的に自動化された状態。
  • レベル3(条件付自動運転車 ※限定領域):特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。
  • レベル4(自動運転車 ※限定領域)):特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。
  • レベル5(完全自動運転車):自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。

 

レベル3の自動運転ではドライバーの過失は問われない

自動運転レベル2までの運転主体はあくまで運転者であり、システムは安全運転を支援する装置という位置付けですが、自動運転レベル3になると運転者とシステムが混在して対応することになり、自動運転レベル4からはシステムが運転主体となります。限定条件下とは言え、システムが主体となり得る自動運転レベル3は、自動運転にとって大きなターニングポイントと言えます。

 

レベル3モードでの走行中の事故は、ドライバーの過失を問われません。事故の際は責任の有無を動画で判定します。回避操作によって避けられない事故であれば、100%相手側に責任あるということになります。レベル3側に責任あると認定されたなら、刑事罰も賠償責任も自動車メーカーが背負うことになります。

 

レベル3の自動運転の走行条件

レベル3の型式指定を受けた自動運転の走行条件は、高速道路での同一車線内での走行に限られます。時速約30キロメートル未満で作動を開始し、作動開始後は約50キロメートル以下という限定的な条件での自動運転が可能です。主に渋滞時の負荷軽減を目的にした自動運転システムです。

 

レベル3では自動運転が発動している際、運転手が前方を注視しなくともよい「アイズオフ」が可能です。走行中でも運転手はカーナビゲーションシステムの画面を見たり、スマートフォンを操作したりできます。ただし、自動運転の条件を外れた場合にシステムから運転手に運転が引き継がれ、いつでも運転できる状態でなければいけません。そのため運転手はシートベルトを着用の上、姿勢を正し、居眠り等はすることができません。

 

自動運転実現のための課題

 自動運転レベル3とレベル4はどちらも特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態です。さらにレベル4では、緊急時の対応も自動運転システムに操作を委ねます。 そしてレベル5では完全自動運転車として、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態にあると定義されています。こうしたさらに完全な自動運転車の普及が進むためには技術面以外にもいくつかの課題をのりこえなければいけません。

 

1.法整備

自動運転実現に必要不可欠な課題として法整備の問題があります。実はこの法整備、世界各国が独自の基準で法律を定めるわけではなく、まずは法律の上位の国際的な条約の改正が必要になります。道路交通に関する国際的な条約は「ジュネーブ条約」と「ウィーン条約」の2つで、日本は「ジュネーブ条約」を批准しています。国際的な条約が改正されたのちに各国が批准する条約に沿って法律を改正するため、日本でいうとジュネーブ条約の改正内容に沿って道路交通法の改正が行われます。現在、国際的には緊急時や限定条件下でなくなる場合に人が運転できればよいとされていて、完全自動運転であっても運転を代われる運転手が必要です。ジュネーブ条約では、自動運転に関する改正はされませんでしたが、非拘束的文書として採択され、これを受けて日本では2020年4月1日に道路交通法道路運送車両法が改正されました。

 

2.インフラ整備

インフラ整備に関しても、意思決定してから効果を発揮するまでに時間がかかることから自動運転実現に必要不可欠と言えるでしょう。現在は限定地域、限定条件において自動運転が実現されつつありますが、条件なしにどこでも自動運転ができるようになるには、自動運転に対応した走行空間の確保やインフラからの自己位置特定支援、専用走行空間が確保されるまでの合流支援などが必要だと国土交通省は検討しています。さらに、そのインフラの安全性を担保する技術基準などの国際標準化を進める必要もあります。

 

3.セキュリティ課題

自動車をネットワークに接続することで生じるサイバーリスクは、以前から無視できない脅威だと見なされてきました。自動運転車がサイバー攻撃を受ければ、遠隔からハッキングされて動作しなくなったり、コントロールされてしまったりする危険や、企業や政府に市民の活動が監視されるリスクが生じるため、深刻な結果につながる可能性があります。英国政府はすでに自動車メーカー向けの一連のガイドラインを発表し、「データセキュリティ」や「不正なデータアクセスのリスク」を管理する責任が自動車メーカーにあることをガイドラインで定めています。国内でも道路運送車両法の改正によって、ハッキング対策としてセキュリティ、ファームウェア更新に関して保安基準が設けられました。

 

さいごに

 自動運転は技術的ハードルよりもこうしてあげた社会受容性の面で、普及に際し、自動車メーカーの動きは少々鈍く感じられます。それでも10年か20年後には普通の自動車へも搭載されていくことになるだろうという予測の中、日々各メーカーも開発を続けています。海外ではウェイモなどの自動運転タクシーを皮切りに商用部門でレベル4の実用化が進み始めており、今後よりレベルの高い普及が見込まれています。

 

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