電気自動車の時代は来るのか? 国内での電気自動車を取り巻く現況や展望を解説

f:id:PentaSecurity:20210715170719p:plain

電気自動車(EV)の普及する展開が非常に速くなっていることに影響されて、系統接続されているEVの車載蓄電池を活用することで、充電だけでなく蓄電された電力を系統に供給する技術であるVehicle-to-Grid(V2G)の実用性が注目されています。

 

今後も増加することが見込まれているEVを有効に使用するために、日本において2018年度から バーチャルパワープラント(VPP)事業の一連の流れの中でV2Gが有効であると証明する事業が開始されています。脱炭素社会を目指して輸送に専門化された部門の電化がより先の段階に移行するにつれて、V2Gへの期待が高まっていますが、本格的に導入するためにはたくさんの課題がある現状となっています。

 

一方サイバーセキュリティの立場から見ると、現在販売されている自動車の多くはセキュリティ面においての強化が十分ではないことが数多く指摘されています。セキュリティ面において脆弱である自動運転車が近い将来に発売されてしまうと、安心して社会生活を送れないことが課題となってしまいます。このように自動車ではさまざまな機能やサービスを搭載することで、多くの脅威が存在しているために攻撃経路も多様となっています。

 

新しい要素としてV2Gを導入するメリット

新しい要素としてV2Gを導入するメリットとは、太陽光や風力といった自然エネルギーを活用している、変動型再生可能エネルギー電源の領域が広がってくることによって、電力量を安定させるために必要となってくる分散型電源やエネルギー貯蔵といった機能を調整することが可能となることを挙げることができます。発電量が不安定な変動型再生可能エネルギーに対応するため、EVが走行せずに駐車している間、発電量が大きく過剰となっている場合は車載蓄電池に充電を、逆に発電量が少なくなっている場合には放電を行うことによって調整されるため、車載蓄電池を活用することによって再生可能エネルギー電源の出力抑制も軽減されることになります。

 

分散型電源としての役割は、停電のような緊急時にも役立つために電力供給セキュリティの向上にもつながります。また発電事業者はV2Gを有効に使用することによって、電力需要増加へ対応するためにきちんとインフラを使える状態を維持することや発電容量をより大きくすることにかかる費用を抑えることができるため、V2Gによる経済的メリットも考えられます。ただし、経済性についてはサービスの内容によって異なってくるため、地域や事業に対応した慎重な分析が必要となります。

 

新しい要素としてV2Gを導入するための課題

新しい要素としてV2Gを導入するための課題を克服することによって、環境を整える必要があります。

 

インフラ整備

新しい要素としてV2Gを導入するために重要となってくることは、インフラをきちんとEVが普及できる状態に維持することです。特に公共充電設備を拡張していくことは、EVの航続距離が気にかかって消費者の心が落ち着かないことを緩和するうえで重要となります。充電設備は普通充電設備と急速充電設備の大きく二つに分類することができます。公共充電設備は約21,000ヶ所に設置されていますが、そのうち急速充電設備が設置されている場所は約7,300ヶ所であることから全体の中で圧倒的に普通充電設備が占める割合が大きいことがわかります。

 

急速充電設備が伸び悩んでいる理由として、コストが高くなってしまうことが考えられます。家庭用に普及しているような安価な普通充電用設備があるのですが、公共の充電設備としては充電時間が長くなってしまうため、短時間で充電することが可能である急速充電設備の設備が望まれますが、設備本体の価格が100万~300万円と高価であることや高圧供給による契約が必要な場合もあるため、現状ではランニングコストが高くなってしまい、充電器利用料だけでは経済的に困難な状況となっている事業が多くなっています。

 

設備本体に対してはEVを普及するための支援として補助金が支給されていますが、一般的にEVが普及することによって利用率を高めることで充電設備の稼働率を高められなければ、資源の有効利用してサービスを供給する構想がしっかりと実現できない状況となっています。消費者側はインフラがしっかりと整備されなければEVを購入することに踏み切ることができないといった状況の一方で、事業者側はEVが普及する見通しが立たなければインフラ整備への投資は難しいといった、二つの相反することの間に立たされてしまい好ましくない状態になっているのです。

 

技術開発

EVの航続距離は導入初期と比較すると大きく伸びているのですが、内燃機関自動車には遠く及ばないことによって、EVは短距離の利用に限られているため車載蓄電池の性能を向上させることが重要となっています。

 

また、蓄電池の性能が悪くなってしまうことが懸念されるため、EV保有者がV2Gを進める一員として加わることを躊躇することが考えられます。EVに対して消費者側が安心できない原因として残っている事柄を解消することによって購入をはたらきかけるためには、実現が困難とされている航続距離の延長や蓄電池寿命の延命といったことを実現できるように変える技術開発が求められているのです。

 

V2Gに関する規制の整備

新たなる施策であるV2Gを実現させるためのフレームワークの前提条件として、投資や参加を促す環境作りが必要となってきますので、V2Gに関する規制を整備することやシステムの標準化を進めることを課題として挙げることができます。また、V2Gに関連している双方向の電力調整や参加者間の情報通信、EV(蓄電池)、戸建・集合住宅、ビル・商業施設、充電設備などについての基準を設定することで、V2Gを考慮するために提起される疑問を抑制することによってコントロールすることにもつながっていきます。

 

ビジネスモデルの確立

V2Gではアプリゲーションサービスプロバイダによって、EV保有者と電力マーケットをつなげる新たなビジネス活動を行う機会が新しく作り出されることになります。しかし、実用化するために必要な情報が蓄積されていないため、このような取引を経済的に可能とするビジネスモデルが形成されるような状況にまで至っていません。有効であると証明することによって、V2Gに関する電力需給やコストの情報を収集することが必要です。ビジネスモデルとしてV2Gがもたらす良い効果が示されることによって、V2Gの普及を支援することになります。

 

自動車セキュリティの課題への取り組み

脆弱性情報の共有手段

自動車業界においても自動車メーカーを超えて、攻撃されやすい情報を共有して運用していく変化が出てきています。専門化された情報セキュリティの各分野において、Information Sharing and Analysis Center(ISAC)と呼ばれる情報共有をするにあたっての技術的側面が導入されており、自動車の情報セキュリティについても、Auto-ISACの活動がスタートしています。今後は早期の攻撃されやすい情報の共有を実現することによって、攻撃手法の本質的な特徴を発見するために、詳細に検討し分析することが可能な限り早く進められることが期待されています。

 

安全性とセキュリティの両立

自動運転を具現化する場合には、安全性とセキュリティとを両立することが絶対的に必要とされることになります。現状のセキュリティ対策技術の大多数は自動的にいくつかのセキュリティ攻撃の実体を検出した時に、電子制御を停止することで安全に停車するという目標を達成するものとなっています。

 

しかし、自動運転の場合には電子制御を何の前触れもなく不意に停止することによって、ユーザ側にコントロールをする行動の権利を委譲してしまうと事故を引き起こす可能性があるため、制御の可用性を維持する必要があります。このため、今後はセキュリティ攻撃検出技術だけではなく、回復技術についても議論する必要があるのです。

 

そう遠くない時期に適用される回復技術として、Over the Air(OTA)によるECUのプログラムを更新する機能があります。今までの間に携帯電話やパソコンにおいて実現されてきたOTA技術は、各OTAベンダーやOSプラットフォーマーから提供されているサービスが主体となっていたためにブラックボックスとして組み入れられていました。

 

人々から安全性が高い機能が要求される自動車の制御システムでは、従来よりも程度を高めて自動車に最適化されているOTA技術について、関係者が集まって意見や主張を述べ合おううといった流れがあるため、従来よりもオープンで透明性を高めた技術が自動車には適用されることが期待されています。

 

車載LANのセキュリティ強化技術

車載LAN上の広範囲にわたって使用されているCANプロトコルでは、セキュリティ機能について定義づけられていないため、さまざまなセキュリティ強化技術の遵守を確実にするためにどうすべきか考えて見定められている現状となっています。

 

CANメッセージにメッセージ認証子(Message Authentication Code: MAC)を付与することによって、攻撃者からのなりすましメッセージを全く取り上げることなく否定する技術は、自動車のソフトウェアプラットフォームを詳細に調整しているAUTOSARにおいても、Secure Onboard Communication(SecOC)という仕様で言及されているため、セキュリティの観点から重要度の高いCANメッセージに対してはMACが付与されることが検討されています。

 

MACを付与しないCANメッセージに対しても、侵入検知システム(Intrusion Detection System:IDS)を用いることによって、自動的にいくつかのなりすましメッセージの実体を検出しようという技術が明確に提案として述べられています。CANメッセージのIDSではCANメッセージが送信される相対的な頻度や、各メッセージの内容の規則正しい変化に伴って別のメッセージの内容が規則正しく変化する、2つ以上のメッセージの統計的な関連を解析することによって正常でないことを検出する方法がゲートウェイを中心として車載制御システムにも導入されることが予想されています。

 

車車間連携に関する取り組み

Car 2 Car Communication Consortium(C2CCC)では、車車間ならびに路車間通信におけるセキュリティについて関係者が集まって意見や主張を述べ合うことを実現しています。その中で信用保証レベル(Trust Assurance Levels: TAL)を定義することによって、レベルごとのセキュリティ要件が定義されています。このTALによって導き出された考えは、各自動車の信用保証レベルの必要性を理解してもらえるように働きかけるものであり、自動運転技術などで使用されている自動車間が互いに巧みに機能する面においても必要とされています。

 

車車間や路車間通信を行った結果、他の自動車やロードサイドユニットから得られた有益な情報をどの程度信じてよいかを判断する場合に、信頼できる自動車からの情報を優先して利用したい、信頼できない自動車からの情報を利用したくないといったユースケースが想定されるため、情報を発信している自動車の信頼レベルを示すTALを利用することによって、情報の発信源が確かにそして紛れもなく信頼することができるレベルを満たしていることを確認できます。さらに公開鍵基盤(PKI)を利用することによって、自動車メーカーの枠組みにとどまらず相互的に自動車が信頼し合う方法なども検討されています。

 

まとめ

日本における今後のEV普及を考察してみると、V2Gを活用することは重要な取り組みとなります。最終的に再生可能エネルギーの主力電源化を目的として取り組んでいる将来の社会においては、変動型再生可能エネルギー電源を取り込むためにV2Gの分散型電源としての役割は非常に期待されていますが、有効であると証明する段階である現時点においてはV2Gを実用化するための課題が数多く残っています。今後どのような方法によって課題や障壁が解消されていくのか、まだ実証規模は小さいのでどのような方法で規模を拡大していくのか、こういった動向について注視していくことが必要です。

 

今後数年で大きく劇的な変化が起きることが予想されている自動車のサイバーセキュリティに対して、その脅威や攻撃事例、対策技術のすべてに対しての議論が現状において不足しています。特に現時点において販売されている自動車を対象とした、セキュリティ強化技術を中心として関係者が集まって意見や主張を述べ合うことはされているものの、自動運転を見据えた将来の自動車に対するセキュリティ強化について十分とは言えないのが現状となっています。自動車のサイバーセキュリティはまだ動き始めた段階で課題が山積みとなっていますが、とりあえずの解決すべき課題から確実に解決していくことが自動車のサイバーセキュリティ強化のためには重要であると考えられます。