「個人情報保護法」は、個人情報の適切な処理と保護を規定する役割を果たしています。個人情報を安全に保護・管理するため、企業や組織には大きな責任が課されており、そのための手段のひとつが「暗号化」です。
この記事では、個人情報保護法の概要と要件、暗号化の必要性、そして法令遵守のための具体的な対策について解説します。
日本の個人情報保護法の概要と求められる要件
日本では、個人情報や個人データについて規制する個人情報保護法が施行されています。この法律は、個人情報の適切な収集、保管、処理を規制することで、個人情報の安全性の強化と保護に重点を置いています。
個人情報保護法の概要
個人情報保護法は、個人情報の適切な取り扱いと保護を目的とした法律です。主なポイントは以下の通りです。
- 個人情報の定義 : 生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できる情報を指します。
- 個人情報保護委員会 : 個人情報保護法を監督する独立した行政機関で、個人情報の適切な取り扱いを監視します。
- 取り扱い基準 : 個人情報の取得、利用、提供に関する基本的なルールがあり、明示的な利用目的の提示、同意の取得、安全な保管が求められます。
- 報告義務 : 一定の規模以上の事業者や公的機関は、個人情報の取り扱いについて個人情報保護委員会への報告が義務づけられています。
- 第三者提供制限 : 個人情報を第三者に提供する際には、本人の同意を得るか、法的な許容範囲内で行う必要があります。
- 漏えい通知義務 : 個人情報の漏えいがあった場合、関係者に速やかに通知する義務が課されます。
- 制裁措置 : 個人情報保護法に違反すると罰則が科され、罰金や刑事罰が課されることがあります。
個人情報保護法の要件
個人情報保護法は、企業などの事業者に対して、個人情報を適切に収集、保存、処理し、保護するための要件を定義しています。日本国内で事業を展開する組織は、この法律の要件を遵守する必要があり、その一環としてデータの暗号化が不可欠です。暗号化の要件は以下の通りです。
- 適切な取り扱いと保護 : 個人情報保護法は、個人情報を適切に収集し、その情報を適切に保護するための要件を規定しています。個人情報は特定の目的で収集し、その目的以外で使用しないことが求められます。
- 安全対策 : 個人情報保護法は、個人情報を保護するための適切な安全対策を講じることを要求しています。データへの不正アクセスや漏えいからの保護が含まれます。
- 事前の同意 : 個人情報を収集する際には、事前に個人情報の提供者から同意を得ることが必要です。同意が得られない場合、個人情報の収集は制約されます。
- 情報の正確性: 収集した個人情報は、正確で最新である必要があります。不正確な情報を修正するための手続きを提供することも要求されます。
個人情報保護法における暗号化の必要性
個人情報保護法において、暗号化は個人情報を保護するための手段として位置付けられています。
暗号化の必要性
個人情報保護法のガイドラインでは、特に「電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止」に関して、個人情報の暗号化による厳重な保管を求めています。モバイルデバイスやUSBメモリなどの携帯可能な電子媒体が紛失や盗難のリスクにさらされやすいことを考慮したものです。
暗号化は、万が一データが第三者の手に渡った場合でも、その内容を解読困難にすることで、個人情報の不正利用や漏えいのリスクを大幅に低減します。企業や組織は個人情報を含むデータを保存する際、特に外部に持ち出す可能性のある場合には、強力な暗号化技術を適用することが強く推奨されています。
高度な暗号化が施されていれば漏えいしても報告義務はない
個人情報保護法では、個人情報の漏えいが発生した場合、原則として個人情報保護委員会への報告と影響を受ける本人への通知が義務付けられています。しかし、高度な暗号化が施されている場合には、この報告義務が免除される可能性があります。
個人情報保護委員会の見解によると、「高度な暗号化等の秘匿化」がされている場合、報告義務が免除されます。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。
- 漏えい等事案が生じた時点の技術水準に照らして、第三者が見読可能な状態にすることが困難となるような暗号化等の技術的措置が講じられていること。
- 暗号化された情報を見読可能な状態にするための手段が適切に管理されていること。
適切な暗号化技術としては、電子政府推奨暗号リストやISO/IEC 18033などに掲載されている暗号技術が挙げられます。また、暗号化された情報の適切な管理には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 暗号化した情報と復号鍵を分離し、復号鍵自体の漏えいを防止する適切な措置を講じていること。
- 遠隔操作により暗号化された情報または復号鍵を削除する機能を備えていること。
- 第三者が復号鍵を使用できないように設計されていること。
これらの条件を満たす高度な暗号化を実施していれば、万が一の漏えい時にも報告義務が免除される可能性があり、企業のリスク管理において重要な意味を持ちます。ただし、暗号化の水準や管理状況は常に最新の技術動向に沿って評価し、必要に応じて更新する必要があります。
暗号化の種類とコンプライアンスのための具体的な対策
ペンタセキュリティは、データ暗号化プラットフォーム「D’Amo(ディアモ)」を提供しています。このD’Amoで個人情報保護法を遵守する方法について説明します。 D’Amoは、データベースとファイルシステムレベルで強力な暗号化とアクセス制御機能を提供し、個人情報を安全に保護することができます。
データ暗号化の種類
データ暗号化は、個人情報保護法を遵守するための重要な手段です。主に、データベースに対する暗号化とファイルに対する暗号化の2種類があります。これらの暗号化方法は、データの形態や保存場所に応じて適切に選択することが重要です。
データベースに対する暗号化
D'AmoのDP(Plug-In方式)とDE(Engine方式)機能を使用して、データベース内の個人情報をカラム単位で 暗号化します。
暗号化されたデータは無断アクセスや露出を防止し、データベース内でのアクセスはユーザーおよびIPアクセス制御機能を通じて厳格に制御されます。
また、API方式のSCPは、高度な暗号化性能を望むユーザー(銀行、証券、病院など)のために、使用中のアプリケーションの修正を通じてデータベースシステムの負荷を最小化し、暗号化後も暗号化前と変わらない性能を担保します。
ファイルに対する暗号化
一方、D.AMO KE(Kernel方式)では、Windows OSを使用するサーバーに対するファイルを暗号化します。
D.AMO KEは多様なファイル形式(PPT、XLS、DOC、PDFなど)に対する暗号化を提供しており、ファイルレベルでのデータの読み取りを防止するとともに、強力なプロセス単位のアクセス制御を通じてランサムウェアに対する防御も同時に行います。
法令遵守のためのセキュリティ対策
個人情報保護法を遵守するためには、暗号鍵の管理とアクセス制御・監査ログの実装を講じる必要があります。
暗号鍵の管理
SG-KMS (Key Management System)は、D'Amoが使用するすべての暗号鍵の一元的管理機能を提供します。
暗号鍵の安全な生成、保存、管理を通じてデータの安全性を維持し、個人情報保護法に基づき、安全な空間で暗号鍵を管理、保護します。
アクセス制御と監査ログ
D'Amoは、データベースとファイルシステムでの厳格なアクセス制御機能を標準で実装しています。監査ログを通じてすべてのデータアクセスと変更事項を記録するため、不正アクセスの試みを検出して対応することができます。
個人情報保護法は、個人情報を保護し、不正アクセスからデータを安全に保護することを要求しています。D'Amoを使えば、カラム単位の暗号化と強力なアクセス制御機能により、マウスを数回クリックするだけで簡単に実装することができます。また、暗号化されたデータは流出しても外部からの復号化が難しく、データ流出事故が発生しても機密情報が露出されず、流出の被害を最小限に抑えることができます。
また、暗号化を使用する組織は、顧客および利害関係者に「データセキュリティへの積極的な措置を取っている」というイメージを与えることで顧客の信頼を高め、企業の評価を向上させられます。
まとめ
個人情報保護法に合わせた暗号化対策は、企業のデータセキュリティに欠かせない取り組みとなっています。適切な暗号化技術の導入により、個人情報の漏えいリスクを大幅に低減していれば、漏えい時の報告義務も免除される可能性があります。
「データベースとファイルの暗号化」「厳格な暗号鍵管理」、そして「効果的なアクセス制御と監査ログの実装」が、法令遵守の鍵となります。これらの対策を総合的に実施することで、企業は個人情報保護法を遵守しながら顧客からの信頼を獲得し、ビジネスの競争力を維持できます。
個人情報保護のための暗号化には、適切な暗号化ソリューションが必要です。暗号化をお考えの方にはD.AMOをおすすめします。D.AMOなら個人情報を保管しているデータベースごと暗号化でき、効率的な暗号化管理を実現可能です。
また、「データ暗号化」については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
データ暗号化とは?仕組みや身近な例・サービスを選ぶポイントを解説