デジタル化が急速に進展する今日のビジネス環境において、情報セキュリティと個人情報保護の重要性はかつてないほど高まっています。特に、企業が扱う顧客データの量が増加するにつれ、そのデータを適切に保護することは、企業の信頼性を維持するために不可欠です。
韓国では、情報保護および個人情報保護を体系的に管理するためのフレームワークとして、「ISMS-P認証」が導入されました。この認証は、企業が情報セキュリティと個人情報保護に関する国際標準に準拠していることを証明するものであり、ビジネスにおける重要な競争力のひとつとなっています。
本記事では、韓国のISMS-P認証の概要、要求事項、暗号化の必要性、そして日本の類似制度との比較について詳しく解説していきます。
韓国のISMS-P認証とは?
ISMS-P(Information Security Management System-Personal information)は、韓国情報通信網法に基づいて運用される情報保護および個人情報保護マネジメントシステム認証制度です。2018年に既存のISMS(情報保護マネジメントシステム)とPIMS(個人情報保護マネジメントシステム)を統合して誕生しました。
この認証は、韓国インターネット振興院(KISA)が審査・管理を行い、企業や組織が情報資産や個人情報を安全に管理し、法令を遵守していることを証明するものです。特に、一定規模以上のインターネットサービス提供事業者(ISP)、通信事業者、クラウドサービス提供者などは、法律によってISMS-P認証の取得が義務付けられています。
ISMS-P認証は国際標準であるISO/IEC 27001のフレームワークを基盤としながらも、韓国独自の法的要件や産業特性を反映した拡張版といえます。
ISMS-P認証の要求事項および特徴
ISMS-P認証の要求事項
- 情報保護管理体系(ISMS)領域:
- 組織の情報資産を保護するための管理プロセス
- リスク評価と対応
- 情報セキュリティポリシーの確立
- 物理的・技術的・管理的セキュリティ対策
- 個人情報保護管理体系(P)領域:
- 個人情報のライフサイクル全体における保護措置
- 個人情報の収集・保管・利用・提供・破棄プロセスの管理
- 個人情報の権利保護
ISMS-P認証の特徴
- 統合的アプローチ:情報セキュリティと個人情報保護を一体的に管理
- リスクベースの管理:組織の特性やリスク状況に応じた柔軟な対応
- 継続的改善:PDCAサイクルに基づく管理体系の継続的な見直しと改善
- 適合性評価:定期的な内部監査と外部機関による審査
認証取得のプロセスは、準備段階、文書化、実装、内部監査、認証審査という流れで進められ、認証の有効期間は3年間です。また、認証維持のために毎年更新審査が行われます。
ISMS-P認証の暗号化の必要性
ISMS-P認証において、暗号化は特に重要な技術的保護措置のひとつとして位置づけられています。韓国の個人情報保護法および情報通信網法では、特定の個人情報(住民登録番号、金融情報、医療情報など)については、暗号化が法的に義務付けられています。
ISMS-P認証における暗号化の必要性
- データの機密性確保: 保存データと送受信データの両方において、不正アクセスからの保護が可能になります。特に、個人識別情報や機密情報は暗号化によってのみ十分な保護が可能です。
- 法的コンプライアンス: 韓国の個人情報保護法では、個人識別番号などの機密情報の暗号化が義務付けられており、これを遵守することがISMS-P認証の基本要件となっています。
- インシデント発生時のリスク低減: 万が一、データ漏えいが発生した場合でも、適切に暗号化されていれば、漏えいデータの悪用リスクを大幅に低減できます。
- ユーザーの信頼確保: 適切な暗号化対策を講じることで、顧客や取引先からの信頼を獲得し、ビジネス関係の強化につながります。
ISMS-P認証で求められる暗号化要件
- 保存データの暗号化(データベース内の個人情報、バックアップデータなど)
- 伝送データの暗号化(SSL/TLSの使用、VPNの導入など)
- 適切な暗号アルゴリズムの選択(推奨される暗号化方式の採用)
- 暗号鍵の安全な管理(鍵の生成、保管、配布、更新、破棄プロセスの確立)
これらの暗号化要件を満たすためには、組織的・技術的な対策を総合的に実施する必要があります。
日本国内のISMS認証、Pマークとの比較
日本と韓国の二国間における情報セキュリティおよび個人情報保護と関連する認証制度を比較してみると、いくつかの重要な違いがあります。
- 認証の分類:
- 韓国:情報セキュリティ管理と個人情報保護管理が「ISMS-P」という単一の認証制度に統合されている
- 日本:ISMS認証(情報セキュリティマネジメントシステム)とPマーク(個人情報保護)がそれぞれ独立した制度として運用されている
- 法的強制力:
- 韓国:一定規模以上の企業や特定業種には、法律で取得が義務付けられている
- 日本:原則として任意の認証制度だが、特定の業界や取引においては事実上の取得要件となる場合もある
- 暗号化要件の具体性:
- 韓国:暗号化の対象となる個人情報の種類、使用すべき暗号アルゴリズム、暗号鍵管理方法などが具体的に規定されている
- 日本:暗号化の要件は「必要な措置を講じる」といった原則的・抽象的な表現が多く見られ、具体的な実装方法は事業者に委ねられる部分が大きい
- 個人情報の暗号化要件の比較:
認証制度 /要件項目 |
韓国:ISMS-P |
日本:ISMS (JIS Q 27001) |
日本:Pマーク (JIS Q 15001) |
パスワード |
一方向暗号化(ハッシュ)が必須 |
安全な保管が求められるが、具体的方法は規定なし |
安全管理措置を講じることが求められる |
個人識別番号 |
住民登録番号などの暗号化が必須 |
リスクに応じた対策が求められる |
マイナンバーなどの適切な安全管理措置が必要 |
クレジット カード情報 |
暗号化が必須 |
リスクアセスメントに基づいた対策が求められる |
安全管理措置の一環として保護が必要 |
生体認証情報 |
暗号化が必須 |
特別な言及なし |
要配慮個人情報として特別な管理が必要 |
暗号アルゴリズム 指定 |
SEED、AES、RSA等など体的な指定あり |
具体的な指定なし(JIS規格などを参照) |
具体的な指定なし |
暗号化鍵管理 |
詳細な管理プロセスの確立が必須 |
一般的な鍵管理の必要性が言及されている |
詳細な規定なし |
外部送信時の暗号化 |
SSL/TLSなどによる暗号化が必須 |
リスクに応じた対策が求められる |
安全管理措置の一環として推奨される |
- その他の注目すべき違い:
- 韓国のISMS-Pでは、個人情報の侵害発生時の通知義務や罰則が厳格に定められており、認証取得の有無が罰則の軽減要素となる場合がある。また個人情報保護委員会(PIPC)が強力な執行権限を持ち、定期的な監査や是正命令を実施
- 日本のPマークは、個人情報保護法よりも高い水準の保護措置を求める場合があるが、技術的要件の詳細度においては韓国ほど高くない
まとめ
日本国内においては、情報セキュリティ全般を対象とするISMS認証や、個人情報保護に特化したプライバシーマーク(Pマーク)制度が、情報セキュリティ対策の基盤として広く知られています。しかし、これらの制度では技術的保護措置、特に暗号化の要件については「必要に応じて」などの表現に留まっており、具体的な実施方法は各組織の判断に委ねられているのが現状です。
しかしながら、デジタル化が急速に進む現代において、企業が顧客からの信頼を維持し、持続的なビジネス成長を実現するためには、認証制度が定める最低限の要求事項への対応だけでは不十分です。実際に起こりうる情報漏えいやサイバー攻撃のリスクに備えるには、機密性・完全性・可用性を確保するための具体的かつ実効的な対策、つまり強固な「暗号化」の実装が不可欠となります。
このような背景を踏まえ、ペンタセキュリティの「D.AMO」は、企業が保持する個人情報や機密データを、保存時および伝送時の両面から確実に暗号化し、さらに暗号鍵のライフサイクル管理や厳格なアクセス制御機能も含めた包括的な暗号化ソリューションを提供します。
D.AMOは、単なるセキュリティ製品という枠を超え、情報保護に対する企業の真摯な姿勢を具体的に示すソリューションと言えるでしょう。制度の要求事項を満たすだけでなく、「実質的な個人情報保護」を実現し、顧客や取引先からの信頼をより強固にするための強力なツールとなりえます。
たとえば、既にISMS認証やPマーク認証を取得済みの企業であっても、セキュリティの次のステップとして「暗号化の強化」に取り組むことは、組織全体のセキュリティ成熟度を大きく向上させることができます。
ISMS認証やPマーク認証を取得は重要な第一歩ですが、真のセキュリティレベル向上を目指すなら、暗号化は「任意」の対策ではなく、組織にとって「必須」の選択と捉えるべきです。D.AMOの導入によって、企業は一歩先を行く堅牢な個人情報保護体制を構築することができるでしょう。