急激に普及するIoTデバイス脅威の現状第2回
~身近で活用されているIoT具体例~
あらゆるものがインターネットにつながる時代になり、同時にそうしたIoTデバイスを狙ったサイバー攻撃が急増しています。前回は、IoTを取り巻く現状や総務省が2016年7月に定めた「IoTセキュリティガイドライン ver1.0」をテーマに、セキュリティ確保に必要な取り組みについて解説していきました。第2回となる今回は、具体的にIoTが私たちの生活のなかでどうやって活用されているのかレポートしていきたいと思います。
IoTのシステムと分類
今現在ありとあらゆるものがインターネットにつながりビジネスや一般家庭に深く浸透しています。IoTシステムはざっくり分類すると組込み系、制御系、プロセス系の分野での開発に分けられます。組込み開発は、機器が動く仕組みの元となるソフトウェアを開発します。制御設計は機械を実際に動かす際に、機能がどのように働くかをコントロールしています。プロセス系設計では製鉄、石油、化学などのプロセス産業において生産・用役プラントで自動制御するための設計です。
- 組込み系
様々な危機にコンピュータープログラムが組み込まれた専門用途の機器とそのシステム
例)キオスク端末、カーナビ、自動車センサー、情報家電、産業用機械
- 制御系
機器やシステムが動作する際のタイミングや順序等を制御するシステム
例)交通システム、工場の生産ライン
- プロセス系
大規模な製造業等で用いられる温度、圧力、流量などを適正値に合わせて制御するシステム
例)石油化学プラント、素材精製
具体的な活用事例
- 自動車分野におけるIoT
1.ハンドルもペダルも無いGoogleの自動運転車「Waymo」
Googleからスピンアウトした自動運転車開発企業Waymo(ウエイモ)は、ペダルもハンドルもないGoogle初の自動運転車を開発しています。昨年12月には配車サービス「Waymo One」をアリゾナ州フェニックスで開始し、既に公道で実用化されています。専用アプリから乗車場所と目的地を指定すれば、所要時間と運賃が提示されるので、呼び出しボタンを押すだけで利用できます。 ただし利用できるのはWaymo独自のアーリーライダープログラムに加入する数百人です。現在試験運行の形をとっており、自動運転で運行されるもののドライバーが同乗しています。完全なドライバーレスを目指して改良を重ねています。
2.突然の自動車事故に緊急通報サービス「HELPNET」
https://www.helpnet.co.jp/about/flow/
事故が発生した際に、エアバッグが開いたときに自動通報する他、車に取り付けられた専用ボタン、カーナビの操作等でHELPNETセンターに通報します。正確な位置情報・車両情報により、救急車・パトカーが素早く現場に到着するシステムです。事故で気絶してしまった際にも自動通話機能によって、GPSで得る正確な位置情報や車両情報などが、消防や警察の所轄窓口へダイレクトに接続されます。
3.ドライバーの心拍数をリアルタイムに計測し事故を減らす「hitoe」
https://inforium.nttdata.com/foresight/hitoe.html
NTTグループとソフトウェアを手がけるSAP、東レ、京都大学等が共同開発した衣服型のウェアラブルデバイス「hitoe(ヒトエ)」は、ドライバーの心拍数、心理的安定度、中枢性疲労度(脳の疲労度)を取得します。運転中のドライバーの眠気を察知し、スマートフォンでアラート通知します。将来的には、クラウド上に取得した心拍データを蓄積し、過去のデータとの比較や傾向を把握する機能や、車線逸脱などの運転情報と心拍データを連携した統合的なアルゴリズムの開発も視野に入れています。
家電・スマートハウス分野のIoT
1. 空気の汚れ具合に応じて空気清浄機を自動制御「Blueair Aware」
Blueair (ブルーエア)はスウェーデン生まれのお洒落な空気清浄機です。Blueair から「Aware(アウェア)」という部屋の空気の状態をスマホで見られるエアーモニターが出ました。Awareは部屋の空気の汚れを感知するセンサーで、部屋の状態をスマホに表示できる装置です。Awareでモニタリングできるのは、「PM2.5/VOC(揮発性有機化合物)/二酸化炭素/湿度/温度」の5点。アプリではそれぞれ項目が分かれており、空気中に浮遊する物質を細かく検知します。スマホで空気を可視化するユニークで便利なIoTデバイスです。
2. スマートスピーカーを通して家電は声で音声操作 「インテリジェントホーム」
https://info.intelligent-home.jp/googlehome/
イッツ・コミュニケーションズとConnected Designが開発・提供しているスマートホームサービス「インテリジェントホーム」は、スマートスピーカー Google Home と連携することにより、家電の音声操作が可能にしました。インテリジェントホームのデバイスを組み合わせたパッケージ「インテリジェントホーム スターターキット」がビックカメラと楽天ブックスで販売開始されています。
「OK Google, テレビをつけて」
「OK Google, エアコンをつけて」
と呼びかければ、ハンズフリーでテレビやエアコンのオンオフ、スマートロックの施錠、テレビのチャンネル変更やボリュームコントロールなどが可能です。 Google Home は、AIを用いた Google アシスタント が搭載されたスピーカーです。声だけで検索やスケジュール、地図など Google の基本サービスを利用できますが、スマートホームのデバイスと連携させることでスマートホームが実現します。
3. 浮気をスマホに通報するスマートマットレス「Smarttress」
スペインのメーカーDurmetが、振動センサーを組み込んだスマートなマットレス「Smarttress」を売り出しました。ベッドの上でパートナーの浮気や不倫などの怪しげな動きを検知すると、スマホにすぐ報告する監視機能がついているということです。
マットレスのバネには24もの振動センサーが内蔵され、ベッド上でのスピードや毎分の激しさ、衝撃やベッドの部位ごとでの出来事をリアルタイムに実況します。単にスマホに通報するだけではなく高度な計測機能がついています。浮気もスマートデバイスで監視できる時代になりました。
4. 荷物の受け取りから通知まで自動化する宅配ボックス「uCella」
アメリカで実用化されているスマート宅配ボックス「uCella」は荷物の受け取り、保管ができるだけではなく、常時Wi-Fi接続しているため、宅配物が届くと、スマートフォンに通知が届きます。追跡バーコードをかざして施錠する仕組みなので、セキュリティも万全です。配送中の荷物の位置をスマートフォンの地図に表示することもできます。
医療分野で活用されるIoT
1. 緊急の病気の時に自宅で医者の診察が受けられる遠隔医療サービス「PlushCare」
PlushCare(プラッシュ・ケア)は、自宅にいながらスマートフォンなどを通じて医者の診療を受けられる遠隔診療サービスです。現在アメリカの18の州でサービスが開始されています。PlushCareのアプリでは自分で好みの医師を選ぶことができ、その医師からオンデマンドで遠隔治療を受けることができます。扱われるのは緊急性の低い病状に限られています。
2. 遠隔地や離島にいつでも薬を届ける無人物流「KamomeAir プロジェクト」
株式会社かもめやが離島に住まう患者への遠隔医療および医薬品の定期配送等を目的とした、遠隔医療プラットフォームの実証実験を開始しています。無人航空機(ドローン)のみを用いた物流システムの取組みとは異なり、人口密集地や狭小地、離島等における物資輸送を複数の物流手段を組み合わせることで、日本などの狭い国土に最適な「島国型」プラットフォームの実現を目指しています。
3. ペット用健康管理ウェアラブルデバイス「FitBark」
FitBark(フィット・バーク)は、愛犬の普段の体調データを取得し、健康管理ができるサービスです。犬の首輪に取り付けられるタイプのアクティビティーモニターで、現在の状況を種別や年齢、体重ごとにあらかじめ計算された数値と比較します。
最後に
こうしてご紹介した以外にもゴミの蓄積状況をリアルタイムで教えてくれるゴミ箱や、どの駅のトイレが空いているか一目でわかるシステムなど実に様々な”スマート”機器がどんどんでています。こうして世界で拡大し続けるIoTは2020年までに530億個にものぼると言われています。管理すべき端末の量がこれまでのITとは比較になりません。しかしIoTデバイスは非常に脆弱な状態で放置されていて、攻撃者に都合の良い環境を提供してしまっている現状があります。
製造メーカーも利用者もIoTの利便性に目はいきますが、どのようなリスクを抱えているかはあまり実感していない人も多いのです。便利なIoTシステムの利用と普及は止められませんが、セキュリティついて関心を高め、対策を講じる必要性があります。一旦攻撃を受けて問題が発生してからでは、システムを奪われて制御不能になる危険性、企業ではリコール等の問題等が発生し膨大な損失を被ることになります。多くの企業にとってIoTがビジネスチャンスであると同時に、サイバー犯罪者にとってもチャンスであるという事実をしっかり見据える必要があります。
※ 次回は、「急激に普及するIoTデバイス脅威の現状第3回」が掲載されます。