社内のファイル共有にストレージサービスを利用している企業も多いでしょう。しかし、運用には継続的な費用がかかるため、長期的に見ればコストがかさみます。そのため、次の選択肢として候補になるのが、ファイルサーバーです。
本記事では、ファイルサーバーとはなにか、メリット・デメリット、導入に際する注意点などについて詳しく解説します。
ファイルサーバーとは
ファイルサーバーとは、ネットワーク上でファイルを保管・共有するのに特化したシステムを指します。このサーバーを利用すると、複数のユーザーが保管されたファイルにアクセスし、閲覧や編集が可能になります。
企業では、データの一元管理や安全な共有を目的に導入され、業務効率の向上に貢献します。また、アクセス権限を設定することでセキュリティを強化し、情報を管理できます。
ファイルサーバーの利用目的
ファイルサーバーは、主に「ファイルの一元管理」「情報共有の円滑化」「データ保護」を目的に利用されます。これにより、事業で生成される膨大なデータを効率的に整理し、複数人でのアクセスや編集を可能にします。
また、データ消失のリスクを抑えてバックアップとしても機能するため、BCP(事業継続計画)の一環としても役立ちます。
ファイルサーバーの仕組み
ファイルサーバーは、OSのファイル共有機能を活用し、ネットワーク上でデータを管理・共有する仕組みです。ファイルの保存や共有だけでなく、ユーザー認証、高速通信、バックアップ、ログ管理など多くの機能を備えています。
ファイルサーバーは「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。前者は社内LANでサーバーを運用し、後者はインターネット経由でクラウドサービスを利用します。クラウド型はIaaSやPaaSを用いた自由な構築や、SaaSによる手軽な導入が可能です。
ファイルサーバーの導入難易度
ファイルサーバーの導入難易度は、使用するOSや環境によって異なりますが、Linux系のサーバーOSやWindows Server IoTなどの専用OSを利用すれば、必要な機能を備えたシステムを比較的容易に構築可能です。
これらのシステムは多くのナレッジやリソースが公開されているため、初心者でも情報を参照しながら導入を進められます。
ファイルサーバーとNASの違い
NAS(Network Attached Storage)は、ネットワーク経由で複数のデバイスからデータを共有できるストレージ装置で、主に個人や小規模の企業向けに設計されています。セットアップが容易で、手軽に利用できるのが特長です。
一方、ファイルサーバーは企業内のファイル管理を目的としたシステムで、ユーザーのアクセス権限やセキュリティを柔軟に設定できます。
仕組みとして、ファイルサーバーはOSのファイル共有機能を活用してLANやWAN上でファイルを保管・共有するのに対し、NASはローカルネットワーク上でファイル共有機能を持つ物理的なストレージ機器として外付けHDDのように扱われます。
ファイルサーバーは、より高いカスタマイズ性とセキュリティを備えているため、特に大規模なシステムでの運用に向いています。
ファイルサーバーのメリット・デメリット
ここでは、ファイルサーバーのメリットとデメリットについて解説します。
ファイルサーバーのメリット
まずはファイルサーバーのメリットを紹介します。
メリット1:ユーザーごとにアクセス権を柔軟に変更できる
ファイルサーバーは、ユーザーごとに異なるアクセス権を設定できます。そのため、機密情報や重要なデータを特定のユーザーにのみ公開することができ、適切なセキュリティ環境を構築できます。また、必要に応じて迅速に権限を変更できるため、プロジェクトの進行やチームメンバーの変更に柔軟に対応できる点も大きな利点です。
メリット2:ファイルの共有が容易
社内の複数のユーザーが同時にファイルにアクセスできる環境を構築でき、チームメンバー間でのスムーズな情報共有が可能となります。例えば、ドキュメントやプレゼンテーションの共同編集が容易になります。
メリット3:データのバックアップができる
ファイルサーバーでは、重要なデータを集中管理し、定期的なバックアップを行うことでデータ損失のリスクを抑えます。データが一元管理されているため、バックアップ作業が効率的に行える点が魅力です。もしデータが消失したり破損したりした場合でも、バックアップから復元できるため、安心して業務を継続できます。
メリット4:ストレージの拡張が容易
ファイルサーバーは、ストレージ容量が不足した場合に追加のハードディスクを簡単に導入できる柔軟性を持っています。データの増加に応じて、必要な分だけ拡張できるため、運用コストを抑えながら効率的に運用できます。この特性により、企業の成長やデータ量の変化に応じたスムーズな運用が可能となります。
メリット5:複数のファイルサーバーで同じデータを保管できる
ファイルサーバーを利用することで、異なるサーバーに同じデータを保管し冗長性を確保できます。このアプローチは、特に重要なデータの保護や業務の継続に寄与します。万が一、片方のサーバーに障害が発生した場合でも、他のサーバーからデータを即座に利用できるため、業務の中断を最小限に抑えられます。
ファイルサーバーのデメリット
ファイルサーバーには上記のような多くのメリットがある一方、デメリットもあります。以下で解説します。
デメリット1:サーバー構築コストがかかる
ファイルサーバーの導入には、初期コストがかかります。専用のハードウェアやソフトウェア、さらには適切なネットワークインフラの整備が必要です。また、オンプレミス型の場合、サーバーの設置や設定に関する専門知識も求められるため、技術者の雇用や外部サポートにかかる費用も考慮する必要があります。
デメリット2:運用、保守にコストがかかる
ファイルサーバーには、定期的なメンテナンスや保守作業が必要です。ハードウェアの故障やソフトウェアのアップデートへの対応、運用に伴うエネルギーコストや冷却費用も無視できません。大規模なシステムになるとこれらの運用コストが累積し、会社全体の運営コストを圧迫する要因にもなりえます。
ファイルサーバーを利用する際の注意点
ファイルサーバーを運用する際に気をつけるポイントがあります。ここでは注意点を解説します。
セキュリティ対策は必須
データ漏えいや不正アクセスを防ぐためには、セキュリティ対策が必須になります。ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入に加え、バックアップを定期的に行うことで、万が一のデータ消失に備えます。
セキュリティ対策を怠ると、情報漏えいのリスクが高まり、企業の信頼性に影響を与える可能性があります。したがって、常に最新のセキュリティ対策を講じることが必要です。ファイルサーバーのセキュリティ対策は、保持しているデータにも施す必要があります。データを暗号化することで安全に運用することができます。
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オンプレミスとクラウドのどちらを選ぶべきか
ファイルサーバーの導入にあたり、オンプレミス型とクラウド型の選択は重要なポイントです。オンプレミス型は、自社内にサーバーを設置するため、初期コストが高くなるケースがありますが、データ管理やセキュリティの自由度が高いのがメリットです。
一方、クラウド型は、初期投資が少なく運用管理が簡便なため、中小企業に適しています。データのバックアップやリストアも自動化されている場合が多く、メンテナンス負担が軽減されます。ただし、クラウド型はデータの保管場所が外部にあるため、セキュリティ面での配慮が必要です。どちらを選択するかは、ニーズや予算に応じて判断しましょう。
まとめ
ファイルサーバーは、情報共有のインフラとしての役割があります。柔軟なアクセス権管理やデータのバックアップ機能、ストレージの拡張性など多くのメリットがありますが、コストやセキュリティ対策の必要性も無視できません。
オンプレミスとクラウドの選択に際しては、企業のニーズや予算を考慮することが重要です。適切なファイルサーバーを導入し、業務効率化を目指しましょう。ファイルサーバーの運用の際にはセキュリティも欠かせません。ファイルサーバーをネットワーク上で守るためにはファイアウォール(WAF)がおすすめです。