近年、インターネットの普及により、データの利活用が重要視とされています。このような中、注目されるのが政府によるIT政策です。2021年には、デジタル庁設置法の施行により、デジタル庁が発足され、国や自治体のIT化やDX化が進められています。
このような形で進められてきたデジタル庁ですが、実際にどのような政策を行っているのでしょうか?この記事では、デジタル庁の活動についてデータ利活用の側面から解説していきたいと思います。
デジタル庁とは
2021年9月に発足したデジタル庁は、社会全体としてDXへの取り組みの遅れを解消するために積極的に国や自治体のDX化を推進する省庁です。デジタル庁は「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」を目指し、デジタル社会実現に向けて様々なデジタル政策を行っています。
多岐にわたってIT化を推進するデジタル庁ですが、それらの活動はいくつかに分類されます。
1. デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及
マイナンバー制度/マイナンバーカード/公金受取口座登録制度/サイバーセキュリティ/データ戦略/DFFT/他
2. 国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現
マイナポータル/公共フロントサービス(ワンストップサービス等)/新型コロナワクチン接種証明書アプリ/ワクチン接種記録システム (VRS)/新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)/他
3. 国等の情報システムの整備及び管理
国等の情報システムの統括・監理/デジタル庁・各府省共同プロジェクトの推進
4. その他
デジタル人材の育成・確保/調達における公平性・透明性の確保/新技術を活用するための調達改革/デジタルの日/他
デジタル庁によるデータ利活用への取り組み
デジタル庁が目指すDX化に欠かせないものがデータの利活用です。データは21世紀の石油ともいわれています。データを利用し新たな価値を生み出すことはDXの本質であり、データの利活用及びシームレスな連携は、既存ビジネスの改革にとどまらず、国の競争力という側面からも非常に重要な意味を有しています。
具体的な活動としては、次の通りです。
GIF(政府相互運用性フレームワーク)
取り扱うデータの量は年々増え続ける一方で、データ管理は複雑になってきています。このような背景から、デジタル庁はデータの利活用や連携を円滑に行うためのデータ基盤づくりとしてGIFを公開しました。GIF(Government Interoperability Framework)とは、データの利活用、連携のためのフレームワークです。
参考:https://www.digital.go.jp/policies/data_strategy_government_interoperability_framework/
GIFの提供前は、自治体や省庁など組織によって、データ公開の仕方が異なり、データ連携が大変でした。例えば、自治体同士の情報システムが連携する際は、データのフォーマットを揃える必要があり、連携のコストを上げていました。そこでGIFは、「データ公開の仕方」に関する「共通のフレームワーク」を提供し、データの扱いに関する差を減らします。
他にもGIFは次のような目的と役割を持っています。
- 相互運用性の向上(連携の容易さ):データの扱い方を項目の対応関係の整理など、連携をしやすくします。
- 拡張性の向上:データとシステムが密な結合になりづらいため、モジュールレベルの再利用が容易になります。
- 設計コストや時間の削減:GIFの内容を参考にすることで、ルールの策定やデータの設計にかかるコストを減らします。
- 設計や運用の高度化:3. にて設計のコストが下がることにより、余ったリソースで設計や運用をより高度にできます。
- ワンスオンリー、ワンストップの実現:一度提出した情報の再提出を不要とします。
GIFに基づいたデータモデルの構築事例
GIFは、データにおける相互運用性を確保し、データドリブンな社会へ進むための第一歩となります。政府をはじめ多くの企業によってGIFを導入する事例が増えています。
東京都オープンデータのGIF対応
東京都はオープンデータを、GIFに則った上で公開しました。今まで東京都のオープンデータは、独自のフォーマットで提供されており、連携などに手間がかかりました。そこで東京都はオープンデータをGIFに沿って公開し、利用者はこれらの手間を省けるようになりました。
参考: https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/03/30/04.html
Microsoft製品のGIF対応
日本マイクロソフトは、Microsoft製のデータプラットフォーム「Microsoft Dataverse」 のGIF標準テンプレートを公開しました。Dataverseとは、データの保管と管理を行うためのプラットフォームであり、Microsoft Power Platform上に展開されています。これを使うことでMicrosoft Dataverse上でデータ構造の設計をせず、連携しやすい形で運用できます。
今の段階で、GIFは標準ではなく参照モデルとして用いられていますが、拡張性があり、選択的に利用できるというメリットもあり、今後は更に広く使われることが期待されます。
参考: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/07863/
マイナンバー制度・マイナンバーカード
「公平・公正な社会の実現」、「行政の効率化」、「国民の利便性の向上」に向けて、2016年からマイナンバー制度が開始されました。 マイナンバー制度とは、国民に対して12桁の識別子(ID)を提供する制度です。例えば、マイナンバー制度を利用することで、役所への申請時に添付資料の省略が可能です。扶養認定の申請では、マイナンバーを添付によって、住民票などの書類を省略できます。
参考」:https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html
マイナンバーカード
マイナンバーカードとは、ICチップの入ったカードで、3つの機能を持っています。
- カード券面の利用:マイナンバーカードの表面は、公的な本人確認書類になり、銀行口座開設など、本人確認に利用できます。マイナンバーカードの裏面にはマイナンバーが記載されており、役所でのマイナンバー確認も同時に行うことができます。
- ICチップの空き領域の利用:マイナンバーカードのICチップには空き領域があり、その領域にカードアプリケーションを搭載することにより、様々なサービスが提供できます。
- 電子証明書の利用:マイナンバーカードのICチップには、電子的に認証や本人確認をする機能が備わっています。これによりマイナポータルなど国のサイトにログインしたり、民間サービスにて身元確認をすることができます。
参考:https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/03.html
マイナンバーカードスマホ化
また2023年5月11日から、マイナンバーカードのスマホ搭載が予定されています。まずAndroid端末が対象であり、スマホにて安全に認証や本人確認ができるようになります。これらの認証は、まずマイナポータル、e-Tax、ねんきんネット(日本年金機構)、MyPost(日本郵便)にて、利用できる予定です。今後は、iOS端末の対応や、民間のサービスの利用も期待されています。
参考:https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2210/31/news076.html
健康保険証マイナンバーカード化
政府は「2024年に現在の健康保険証を撤廃し、マイナンバーカードへ一体化した形へ切り替える」と発表しました[^kenko]。これにより、マイナンバーカードの提示で、病院の保険適用ができます。さらにマイナンバーカードを使ったデータ連携により、マイナポータルにて、健診の結果、処方された薬、医療費の情報が閲覧できます。
参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230307/k10014000351000.html
まとめ
デジタル庁は、国が保有している基本データを適切に管理し、オープンプラットフォームで利活用できるようにする包括的なデータ戦略を推進し、社会的課題の解決を図ろうとしています。
前述したGIFやマイナンバー制度を推進し、データファスト社会へと着実に向かっていますが、そこで見逃してはいけないことが「データに対するセキュリティ」です。質の高いデータ量が増えるほど、サイバー攻撃の狙いになりやすいため、政策を推進していく上で、データそのものの安全性確保に向けた対策への取り組みが必要です。
デジタル庁による活発なデータ活用推進政策について、今後の動向に期待です。
データセキュリティソリューション「D’Amo」について