フレームワークとライブラリの違いは?使い分け方や代表例も紹介

現代のソフトウェア開発では、効率よく開発を進めるために「フレームワーク」と「ライブラリ」が欠かせません。両者の名前は聞いたことがあっても、具体的な違いを正確に理解していない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、フレームワークとライブラリの違いを基本からわかりやすく解説します。使い分け方や代表例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

フレームワークとライブラリの大まかな違い

まずは、フレームワークとライブラリの大まかな違いを押さえておきましょう。いずれもソフトウェア開発を効率化するものですが、その役割・位置付けが違います。フレームワークとライブラリを簡単に説明すると、以下のとおりです。

フレームワーク(Framework):あるソフトウェアに必要な機能を集約した枠組み

ライブラリ(Library):ソフトウェアにおける特定の機能を実現するための部品

自動車の製造に例えると、ナビやタイヤ、ヘッドライトなどの部分的な要素がライブラリです。すでに用意されたナビを車体に組み込むだけで、ナビゲーション機能を搭載できます。

一方、そのナビを動かすためには、機器を固定したり電力を供給したりする土台が必要です。その土台の役割を果たす車体そのものがフレームワークに当たります。フレームワークには、ナビの表示やタイヤの制御など、基本的な機能の仕組みが備わっています。

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ここからは、それぞれの概要をもう少し詳しく見ていきましょう。

フレームワーク(Framework)とは

英語のフレームワーク(Framework)は、「枠組み」「骨組み」「構造」といった意味の言葉です。ソフトウェア開発では、基本的な機能を集約し、ソフトウェア全体の枠組みを提供するものを「フレームワーク」と呼びます。

たとえばWebサイトを開発する場合、「ログイン機能」や「決済機能」といった共通部分は多くのWebサイトで必要です。Web開発用のフレームワーク(Webフレームワーク)を使えば、こうした機能をゼロから作らずに済みます。

フレームワークを使うことで、共通の枠組みに独自の仕様や設計を組み込む形で開発を始められます。そのため、コードの実装や画面のレイアウト作成といった開発作業の負担を大幅に減らすことが可能です。

ライブラリ(Library)とは

英語のライブラリ(Library)は、「図書館」「書庫」といった意味の言葉です。図書館で必要な本だけを取り出して借りるように、特定の機能に必要なコードを取り出して使えるようにしたものを、ソフトウェア開発では「ライブラリ」と呼びます。

たとえば、Webサイトに画像を加工して表示する機能を加えたい場合、画像処理専用のライブラリが便利です。画像の縮小や回転、色調整といった、画像処理に必要な関数がすでに揃っており、プログラムの中で呼び出すだけで利用できます。

機能や用途ごとに多彩なライブラリが提供されているため、開発者のニーズに合わせて選んで使えるのが強みです。なお、フレームワークの内部にもさまざまなライブラリが組み込まれていることが多く、両者は密接に関わっています。

フレームワークとライブラリの具体的な3つの違い

フレームワークとライブラリの役割や位置付けについては、違いが大まかにイメージできたのではないでしょうか。ここからは、両者の具体的な違いについて、「主導権」「自由度」「学習コスト」の3観点から解説します。

違い①主導権

ひとつ目の違いは、主導権です。ここで言う「主導権」とは、「開発の流れをどちら(開発者 or 開発ツール)がコントロールするのか」を意味します。

フレームワークを用いる場合、あらかじめ用意された枠組みの中に、開発者がコードを組み込んでいきます。このとき、フレームワークが決めたルールに従ってコードを書かなければなりません。つまり、主導権は開発ツール側にあります。

フレームワークとライブラリの違い

一方でライブラリを用いる場合は、開発者がプログラムの実装を進めながら、必要に応じてライブラリを呼び出す流れとなります。仕様や設計に合わせて、どのライブラリをいつ、どのように使うかを決められるため、主導権は開発者側にあります。

フレームワークとライブラリの違い

違い②自由度

2つ目の違いは、自由度です。ライブラリのほうが開発における自由度は高いと言えます。

フレームワークは全体の仕組みを構築する前提で作られており、基本的にはひとつを選んで利用します。たとえば、あるWebフレームワークでWebサイト全体を構築した場合、別のWebフレームワークを同時に使うことはできません。異なるルールが干渉してしまうためです。

一方、ライブラリはプログラム単位で柔軟に使えます。メール送信にはライブラリA、画像処理にはライブラリBといった使い分けが可能です。また、同じ用途でもファイルごとに異なるライブラリを採用できます。複数を組み合わせやすい点がライブラリの強みです。

違い③学習コスト

3つ目の違いは、学習コストです。学習コストとは、新しい知識や技術の習得に必要となる労力や時間を指します。一般的に、ライブラリのほうが学習コストは低い傾向があります。

フレームワークを使う場合、全体の構造やルールを理解しなければなりません。覚える内容が多いため、学習コストが高くなりやすいです。

一方で、ライブラリは特定の機能に特化しているため、必要な部分だけを理解すれば利用できます。入力データの形式や呼び出し方といった最低限の知識で済むため、短期間で取り入れやすいのがメリットです。

フレームワークとライブラリはどう使い分ける?

フレームワークとライブラリは、それぞれに強み・弱みがあり、どちらが優れているとは一概に言えません。効率よく高品質なソフトウェアを開発するためには、状況に応じた使い分けが大切です。ここでは、それぞれを活用すべき代表的なケースについて解説します。

フレームワークを使うべきケース

フレームワークを使うべきケースは、主に下記の2つです。

  • 新しいソフトウェアを最初から開発したい場合
  • チーム内で開発のルールを統一したい場合

フレームワークの強みは、ソフトウェア全体を包括的に効率化できる点にあります。ソフトウェアの規模が大きくなるほど、効率化できる効果は高くなるでしょう。特に、開発作業のボリュームが多くなる新規開発では高い効果が期待できます。

また、フレームワークはひとつのルールに従う必要がありますが、見方を変えればルールを標準化できるとも言えます。そのため、フレームワークを利用すれば、複数人が関わる開発でも一貫したルールのもとで進めることが可能です。

ライブラリを使うべきケース

ライブラリを使うべきケースは、主に下記の2つです。

  • 特定の機能だけを素早く追加したい場合
  • 独自の設計で開発を進めたい場合

ライブラリの強みは、必要な部分だけを取り入れられる柔軟さにあります。たとえば、画像処理のように特定の機能を追加したい場合に適しています。

また、独自の構造や設計方針で開発を進めたい場合も、フレームワークのようなルールに縛られずに開発できる点がメリットです。

代表的なフレームワーク・ライブラリ一覧

フレームワークとライブラリによって、対応している開発言語が違います。主要な開発言語ごとの代表的なフレームワークとライブラリを一覧表にまとめました。

開発言語 代表的なフレームワーク 代表的なライブラリ
Python Django(Web開発)/Keras(AI開発) NumPy(数値計算)/Pandas(データ分析)/Matplotlib(グラフ描画)
Java Spring Framework(Web開発)/Android SDK(Androidアプリ開発) Jackson(データ処理)/JUnit(自動テスト)
PHP Laravel(Web開発)/Cake PHP(Web開発) Sentinel(認証)/PHPMailer(メール送信)
JavaScript Vue.js(Web開発)/Next.js(Web開発)/Electron(デスクトップアプリ開発) jQuery(Webページ操作)/React(UI構築)
C# .NET(Web開発・Windowsアプリ開発)/ASP.NET Core(Web開発) Json.NET(データ処理)/Serilog(ログ出力)

開発言語や開発分野、機能、用途に合わせて、気になるライブラリやフレームワークをチェックしてみましょう。

まとめ

フレームワークとライブラリは、ともに開発の効率化を支える重要なツールです。フレームワークはソフトウェア全体の枠組みを提供し、ルールに沿って開発を進めるのに適しています。一方、ライブラリは特定の機能を柔軟に追加でき、独自設計での開発にも活用できます。両者の特徴や強みを理解し、目的や用途に応じて適切に使い分けましょう。