データドリブンとセキュリティを両立するには?基本から解説

デジタル技術の発展により、従来は紙などで管理されていた情報は、データとして扱われるようになりました。インターネットの普及も相まって、こうしたデータはビジネスをはじめ、さまざまな場面で日常的にやり取りされています。

データ活用の重要性が高まる中で、注目されているのが「データドリブン」というアプローチです。データドリブンを取り入れ、業務改善につなげたいと考えるビジネスパーソンも増えています。

一方で、データの取り扱いが増えるほど、情報漏えいや改ざんといったリスクも増大します。データドリブンを取り入れるうえでは、セキュリティの視点が欠かせません。本記事では、データドリブンの基本からセキュリティと両立させるためのポイントまで解説します。

データドリブンとは

データドリブン(Data Driven)とは、担当者の主観だけに頼らず、収集したデータにもとづいて意思決定を行うアプローチのことです。データを判断や行動の原動力とする考え方であり、日本語では「データ駆動」と訳されます。

予測困難な昨今の市場環境では、過去の経験則や主観的な判断だけでは状況を正確に捉えにくくなっています。

そこで、売上や顧客の行動履歴といった客観的なデータを分析し、次の一手を決めるデータドリブンが注目されています。正確性やスピードが求められる経営判断などを中心に、データドリブンを取り入れる企業が増えています。

データドリブンを取り入れるメリット

データドリブンを取り入れるメリットは、主に以下の2つです。

  • 意思決定の精度を向上できる
  • 意思決定がスピーディになる

メリット①意思決定の精度を向上できる

データドリブンを取り入れることで、意思決定の精度を向上できます。個人の主観や先入観に左右されず、事実にもとづいた論理的な判断が可能になるためです。

主観に依存した意思決定では、担当者の直感や経験則によって判断が大きく左右されがちです。たとえば、特定の成功体験や偏った経験をもとに経営判断を行うと、市場の実態に合わない選択をしてしまう恐れがあります。

その点データドリブンでは、過去のデータを継続的に収集・可視化・分析することで、傾向やパターンを正確に把握できます。その結果、リスクの高い選択肢を事前に避けたり、確度の高い施策にリソースを集中させたりすることが可能です。

また、データにもとづく判断基準が共有されていれば、担当者が変わっても同じ水準で意思決定が行えます。属人化を防ぎ、組織として安定した判断ができる点も大きなメリットです。

メリット②意思決定がスピーディになる

データドリブンなアプローチを行うことで、意思決定がスピーディになります。判断の根拠として「客観的な数値」を提示できるため、主観にもとづいたあいまいな議論や関係者間の不要な調整時間を削減できるからです。

従来は、関係者間で情報の捉え方が異なったり、判断基準があいまいだったりすることで、合意形成に時間を要するケースがありました。データドリブンな環境では、あらかじめ定義されたデータを共通の判断材料とすることで、認識のズレを最小限に抑えられます。また、施策の結果も数値によって早期に検証できるため、成否をすばやく判断し、状況の変化に合わせた軌道修正を可能にします。

データドリブンな経営を実現した企業の事例

データドリブンのイメージを具体化するために、企業における事例を見ていきましょう。ここでは、実際にデータドリブンな経営を実現した企業の事例を3つ紹介します。

  • 飲食業:需要予測と食品ロス対策
  • 製造業:稼働データの遠隔監視
  • 物流業:リソース配置の最適化

事例①株式会社あきんどスシロー:需要予測と食品ロス対策

大手回転寿司チェーンを運営する株式会社あきんどスシローでは、2000年代初頭からデータドリブンな経営を取り入れていました。その代表例が、寿司皿にICタグを取り付け、喫食データをリアルタイムに収集する仕組みの導入です。

この仕組みを通して、「どのネタがいつ、どれだけ食べられたか」といった詳細な状況が数値化されました。レーン上の商品の動きを正確に把握することで、これまで見えなかった無駄が明らかになったのです。

同社ではこれらのデータを分析し、需要予測の精度を高めました。その時々の客入りや好みに合わせてネタを提供できるようになり、食品廃棄ロスを大幅に削減しています。

出典:総務省|平成26年版 情報通信白書|ビッグデータ活用の注目事例

事例②株式会社小松製作所:稼働データの遠隔監視

建設機械メーカーのコマツ(株式会社小松製作所)は、自社の製品にIoT(モノのインターネット)を組み込むことで、データを起点とした価値創出を推進しています。その中核が、建機の稼働状況を遠隔監視するシステム「Komtrax(コムトラックス)」です。

取得した稼働データによって故障の兆候を事前に検知し、突発的な稼働停止を防ぐとともに、盗難防止といった形で顧客に付加価値をもたらしています。一方で、建機の稼働状況をデータとして把握することで、自社の修理・保全サービスの品質改善にも役立てています。

顧客価値の向上と経営の効率化、その両方をデータドリブンで実現した好例です。

出典:会社概要 | DX戦略 | コマツ産機

事例③ヤマト運輸株式会社:リソース配置の最適化

ヤマト運輸株式会社では、配送実績や荷物量といったデータを活用し、車両やドライバーなどの経営リソースを最適に配置するデータドリブンな経営を推進しています。つまり、拠点ごとの主観に依存していた従来のリソース配置から、データにもとづくリソース配置への転換です。

具体的には、過去の実績から将来の業務量を予測し、繁忙期や地域の需要に合わせた計画を立てています。業務量とリソースのミスマッチを抑えることで、無理や無駄の少ない効率的な運営を実現しました。

出典:データ・ドリブン経営への転換に向けたデジタル戦略の推進

データドリブンにおけるセキュリティの重要性

データを活用するうえで重要となるのが、セキュリティ対策です。ここでは、データドリブンにおけるセキュリティの重要性について解説します。

  • データ量もサイバー攻撃も増加している
  • データが漏えいすると多大な被害を受ける
  • データの改ざんは経営判断を揺るがす

①データ量もサイバー攻撃も増加している

IT社会の進展とともにデータへの依存度が増し、企業が保有するデータ量も増加しています。そして、サイバー攻撃で狙われるのは多くの場合、そうした企業のデータです。データ量が増えれば攻撃対象も広がり、サイバー攻撃の増加を招きます。

実際に、サイバー攻撃の観測件数は年々増加の一途をたどっています。総務省によると、大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)が観測した「サイバー攻撃関連の総パケット数」は約6,862億に達し、2015年と比較して10倍以上に増加しました。

出典:総務省|令和7年版 情報通信白書|サイバーセキュリティ上の脅威の増大

このように、データ活用を進める企業にとって、サイバー攻撃は「いつ起きてもおかしくない」現実的な脅威なのです。

②データが漏えいすると多大な被害を受ける

万が一、企業の機密データが外部に漏えいすれば、多大な被害を受けることになります。企業の信頼は失墜し、顧客離れによる経営上の損失はもちろん、損害賠償やシステム復旧にかかる費用も甚大となるでしょう。

IBM社の調査によると、データ侵害を受けた場合の平均被害額は、日本円(2025年12月時点の為替レート)で約6億8,000万円です。このように、データが脅かされれば、経営危機に直結する多大な被害が懸念されます。

出典:2025年データ侵害のコストに関する調査 | IBM

③データの改ざんは経営判断を揺るがす

漏えいだけでなく、データが不正に書き換えられる「改ざん」も重大なセキュリティリスクです。データの改ざんが起きると、データドリブン経営の正確性が失われ、経営判断を揺るがす事態となりかねません。

たとえば、売上データや在庫データが改ざんされていれば、需要予測や施策効果の分析結果も事実と乖離します。その結果、実態に合わない投資判断やリソース配分を行ってしまう恐れがあります。

このように、データの正確性や一貫性が失われると、経営判断そのものが揺らぎます。データドリブンを実現するうえでは、外部からの不正操作や内部不正を防ぎ、データの完全性を維持することが欠かせません。

データドリブンを実現するためのセキュリティ対策

安全にデータを活用するためには、適切なセキュリティ対策が不可欠です。ここでは、データドリブンの実現に必要な4つの対策をご紹介します。

  • データの暗号化
  • データのバックアップ
  • アクセス制御
  • ネットワーク監視

対策①データの暗号化

組織内で保管しているデータや、通信経路上のデータを暗号化しましょう。暗号化されていれば、万が一データが盗まれたとしても、第三者は内容を解読できません。重要な個人情報や機密データは必ず暗号化し、情報漏えい時のリスクを低減させることが大切です。

クラウドサービスやデータベースには、保存時や通信時に自動で暗号化する機能が備わっているものも多くあります。また、VPN(Virtual Private Network)を利用すれば、テレワークや出張先など、社外から社内ネットワークへアクセスする際にも安全な通信経路を確保できます。こうした仕組みを適切に活用しましょう。

データ暗号化については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

データ暗号化とは?仕組みや身近な例・サービスを選ぶポイントを解説

対策②データのバックアップ

万が一、データを失っても復元できるよう、定期的なバックアップを行いましょう。サイバー攻撃だけでなく、操作ミスやシステム障害、自然災害などによってデータが失われる事例も少なくありません。

バックアップデータは、普段利用しているシステムとは別の環境に保管することが理想です。物理的に離れた場所や別ネットワークに保存しておくことで、障害発生時でも速やかな復旧につなげられるでしょう。

対策③アクセス制御

データへのアクセス制御を行い、アクセスできる人を必要最小限に絞ることも重要です。役職や業務内容に応じて権限を適切に設定し、不要なアクセスを制限しましょう。内部不正によるデータの漏えいなどの防止にもつながります。

多要素認証などを導入して本人確認を厳格化すれば、なりすましによる不正アクセスや内部不正を防ぐ効果も高まります。

対策④ネットワーク監視

データを狙う攻撃者の多くは、インターネットを介して内部ネットワークに侵入・攻撃を試みます。こうした活動を早期に検知・対処できるよう、ネットワーク監視も強化しましょう。

たとえば、WAF(Web Application Firewall)を導入することで、Webアプリへの幅広い攻撃を検知・防御できます。適切な監視ツールやセキュリティ機器を組み合わせ、継続的に脅威を監視する体制を整えましょう。

WAFの導入については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。

WAF導入の完全ガイド|種類やメリット、失敗しない選び方を解説

まとめ

データドリブンとは、担当者の主観だけに頼らず、収集したデータにもとづいて意思決定を行うアプローチのことです。客観的なデータを根拠に据えることで、意思決定の精度とスピードを向上できます。

ただし、安全にデータを活用するためには、サイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクに対する備えが欠かせません。セキュリティ対策を万全に整え、安全な環境でデータを最大限に活用していきましょう。