DB(データベース)暗号化(以下、データベース暗号化)は、企業の情報資産を守るための基本的なセキュリティ対策です。本記事では、データベース暗号化の定義、必要性、種類、そしてメリット・デメリットについて解説します。
いくらセキュリティ対策を行っても、悪質な攻撃者に突破されてしまう可能性はあります。そんなとき、最後までデータを守るのがデータベース暗号化で、いわば最後の防衛線といえます。
効果的なデータベース暗号化の実施方法と注意点を理解し、自社のセキュリティ強化に役立てましょう。
DB(データベース)暗号化とは
データベース暗号化とは、データベースに保存されている情報を、暗号化アルゴリズムを用いて読み取り不能な形式に変換する技術です。
また、データベース暗号化の主な目的は、企業の重要な情報資産を保護し、セキュリティリスクを軽減することです。
例えば、
- 機密情報、個人情報の保護
- コンプライアンス(法令遵守)の実現
- データ漏えいリスクの最小化
などがあります。
データベース暗号化の基本的な仕組みは、以下の3つの主要プロセスから構成されています。
- 暗号化:データをデータベースに保存する際に、暗号化アルゴリズムを用いて判読不能な形式に変換
- 鍵管理:暗号化と復号に使用する鍵を安全に生成、保管、配布
- 復号:正当な権限を持つユーザーがアクセスする際に、暗号化されたデータを元の形式に戻す
この仕組みにより、必要なときには適切なアクセスが可能となり、安全性と利便性が両立されるのです。
DB(データベース)暗号化の必要性
データベース暗号化の必要性としては、以下の3つの理由が挙げられます。
・情報資産の保護
企業のデータベースには重要な情報が蓄積されています。暗号化によってデータを読み取り不能にすることで、不正アクセスが発生しても情報の機密性を保持することが可能です。
・法令遵守
個人情報保護法やGDPRなどの法規制が強化され、データ暗号化が推奨されています。これに対応することでコンプライアンスリスクを軽減できます。
・データ漏えいリスクの軽減
サイバー攻撃の手法が巧妙化する中、暗号化はデータが外部に流出したとしても悪用のリスクを軽減させることが可能です。
DB(データベース)暗号化の種類
データ暗号化とは、価値のあるデータが読み取れないように符号化形式に変換する行為を言います。ただし、どのようなシステム階層上で暗号化を実装するのかによってその方式が大きく変わってきます。ここではそれぞれの暗号化方式について解説します。
一般的にデータベース暗号化はAPI、プラグイン、TDE方式の3つに分けられます。
API方式
API(Application Programming Interface)方式とは、データベース上ではなくアプリケーション層でデータを暗号化する方式を言います。
API方式の暗号化では、暗号化による処理速度の低下を避けることができます。アプリケーションサーバーに設置したAPIを利用し暗号化を行い、DBMSの方にクエリーを転送する方式であるため、暗号化および復号化の性能劣化を最小限に抑えることができます。
Plug-In方式
Plug-In(プラグイン)方式は、暗号化および復号化のモジュールがデータベース上で実行される暗号化方式です。API方式と違って、アプリケーション領域とはお互い完全に独立しているため影響を与えません。
また、すべての作業がGUI基盤で行われるため、管理の利便性が向上し、暗号化カラムに対する一致検索、範囲検索、インデックス支援が容易になります。また、元のテーブルと同じ名前を付けたビューを作成でき、Oracle・MS-SQL・DB2などを使用している環境に適したデータベース暗号化方式です。
TDE方式
TDE(Transparent Data Encryption、透過的暗号化)はデータベースのカーネル層で暗号化されたテーブルスペースを生成し、当該スペースで暗号化対象の暗号化および復号をブロック単位で行います。
データベースのカーネル層から暗号化を実装できるため、構築が容易でSQL文章の修正が不要というメリットがあり、比較的簡単な暗号化方式であるとも言えます。また、ソフトウェア基盤の暗号化モジュールがデータベースエンジンに直接設置されるため、アプリケーションの修正なくデータベース上でカラム、テーブルスペース単位の暗号化を行います。

DB(データベース)暗号化のメリット・デメリット
データベース暗号化には、多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
メリット
最初にデータベース暗号化のメリットについて解説します。
サイバー攻撃への対策
データベース暗号化は、データの安全性を高め、サイバー攻撃による被害を軽減します。仮に不正アクセスによってデータが盗まれたとしても、暗号化されていれば解読は極めて困難です。特に、新種のマルウェアや標的型攻撃など、従来の防御策では対応しきれない高度な脅威に対しても有効です。
誤操作対策
続いては、ヒューマンエラーによる情報漏えいリスクの軽減です。例えば、機密データを誤って外部に送信してしまった場合でも、暗号化されていれば内容を読み取られる危険性は低くなります。そのため、従業員の不注意による情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
情報機器処分時の対策
古いサーバーやハードディスクを廃棄する際、データの完全消去が不十分な場合があります。しかし、データベースが暗号化されていれば、たとえ物理的にデータが残っていたとしても、第三者が読み取ることは極めて困難です。
端末の紛失、盗難対策
テレワークの普及に伴い、PCなどの端末の紛失や盗難のリスクが高まっています。データベース暗号化により、もし端末が第三者の手に渡ったとしても、データを解読されるリスクを最小限に抑えられます。
デメリット
次に、データベース暗号化のデメリットを紹介します。
導入・運用コストがかかる
データベース暗号化システムの導入には、初期投資と継続的な運用コストが必要です。
システム全体のパフォーマンスに影響を与える可能性がある
暗号化・復号の処理により、システム全体のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。場合によってはハードウェアの増強が必要になるケースもあります。
暗号鍵の管理が必要
暗号化には、暗号鍵の厳重な管理が必要です。鍵を紛失してしまうと、暗号化されたデータへアクセスできなくなります。また、鍵が漏えいしてしまうと、セキュリティ事故、不正アクセスにつながる可能性が考えられるでしょう。適切な鍵管理システムの導入と、定期的な鍵の更新などの管理が必要となります。
アクセス制限は別途必要
データベース暗号化はデータの保護に有効ですが、不正アクセスそのものを防ぐものではありません。そのため、適切なアクセス制御や認証システムなど、他のセキュリティ対策と組み合わせて実施する必要があります。
まとめ
本記事では、データベース暗号化の重要性と実施方法について詳しく解説しました。データベース暗号化は、サイバー攻撃対策や法令遵守、情報漏えい防止に効果的です。自社のニーズに合わせて適切な暗号化方法を選択していく上で、導入・運用コストや暗号鍵管理などの面も考慮して、セキュリティ対策を強化することが重要です。
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また、「データ暗号化」については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
データ暗号化とは?仕組みや身近な例・サービスを選ぶポイントを解説