患者の個人情報保護:医療現場で画像ファイルの安全対策が求められる理由

現代の医療現場では、患者の個人情報の保護がますます重要な課題となっています。医療機関はカルテや診療記録などのテキストデータだけでなく、X線画像や整形手術の前後写真といった画像ファイルも保護する責任を担っています。これらの画像ファイルは患者のプライバシーを含む重要な情報であり、不正アクセスやランサムウェア攻撃のターゲットとなる可能性があります。

本記事では、画像ファイル保護の必要性や暗号化の重要性について解説し、具体的な対策方法を提案します。

 

画像ファイル保護の必要性

画像データは、患者のプライバシーや安全に直接的な影響を及ぼします。不適切な管理によってこれらが流出した場合、以下のようなリスクが生じます。

  • 個人情報の漏えいによるプライバシ侵害
  • 療機と患者の信頼関係の喪失
  • 高額な罰金や法的責任

特に、顔や身体の特徴がそのまま含まれる画像データは、他のデータと比較して漏えい時の影響が深刻であり、迅速かつ適切な対策が求められます。

 

画像ファイル保護の具体的な対策

化技術の導入

医療画像フォーマット(例:JPEG、PNG、DICOM(PACS)など)に対応した暗号化技術を採用することで、セキュリティレベルを高めることが可能です。

アクセス限の管理

画像ファイルへのアクセスを、業務上必要な人員に限定することで、情報漏えいのリスクを抑えます。

送時のセキュリティ

TLS(Transport Layer Security)などの暗号化プロトコルを使用して、データ転送時のセキュリティを確保します。

 

画像暗号化のメリット

流出リスクの最小化

暗号化された画像ファイルは、万が一流出しても解読が困難であるため、不正利用のリスクが大幅に軽減されます。

法令の遵守

日本の個人情報保護法や欧州のGDPR(一般データ保護規則)では、データ保護の観点から暗号化の実施が推奨されています。 医療機関が適切な暗号化を導入することで、これらの規制に準拠しつつ、信頼性を高めることが可能です。

患者との信構築

高度なセキュリティ対策を実施することで、患者に安心感を与え、医療機関への信頼を向上させることができます。

 

病院におけるランサムウェア被害事例とその影響

事例 1:半田病院 (2021年)

2021年10月、徳島県のつるぎ町立半田病院がランサムウェア攻撃を受けました。攻撃者は病院の電子カルテシステムを暗号化し、身代金として多額の金銭を要求しました。病院側は当初、身代金の支払いを拒否し、外部業者に依頼してシステムの復旧作業を行いました。この際、調査復旧費として約7,000万円を支払いました。およそ1年後、攻撃者が突如、身代金として約450万円を受け取ったとの声明を発表しました。病院側は否定していることから、外部業者が交渉を行った可能性も考えられますが、真相は不明です。

 事例 2:大阪急性期・総療センタ (2022年)

2022年10月、大阪急性期・総合医療センターが、VPNの脆弱性を悪用されたことによってランサムウェア攻撃を受けました。この攻撃は、病院が外部の事業者を通じてVPN接続していた際の脆弱性を突かれ、RDP(リモートデスクトッププロトコル)を経由して侵入されたものです。攻撃者は、病院のHIS(病院情報システム)を含むネットワーク全体に感染を広げ、約2300台のサーバーと端末の半数以上がランサムウェアに感染しました。結果として、病院は紙ベースの診療記録に依存せざるを得なくなり、約73日間にわたって業務が停滞しました​。

 事例 3分生協病院 (2024年)

2024年3月、鹿児島県霧島市にある国分生協病院では、画像管理サーバーがランサムウェアに感染しました。この攻撃による患者の個人情報流出はありませんでしたが、救急と一般外来の対応が制限されました。病院はインターネット接続を遮断して再侵入を防ぎましたが、攻撃者からの身代金要求はありませんでした​。

 

D.AMO KEを活用した医療用画像管理のセキュリティ強化策

D.AMO KEは、Windows OS環境でフォルダおよびファイル単位の強力な暗号化機能を提供し、DICOMやJPEGなどの標準的な医療用画像ファイルを簡単かつ迅速に保護できるソリューションです。本技術をPACS(医療用画像管理システム)に適用することで、患者のセンシティブな医療データを安全に管理する方法を紹介します。

 

D.AMO KEを活用した医療用画像管理システム(PACS)の暗号化構成図
  • 画像取得サーバーであるACQサーバーとPACSシステムが使用するWASサーバーの画像フォルダの暗号化
  • 機器から取得した映像データは自動的に暗号化され、NAS Storageに暗号化画像ファイルとして保存

構成および適用方法

  1. D.AMO KEのインスト
    PACSシステムで使用されるACQサ(画像取得サーバー)およびWASサ(画像配信サーバー)にAMO KEをインストールします。
  2. 化フォルダの設定
    各サーバーで医用画像ファイルが保存されるフォルダを、ネットワークドライブに指定し、ワンクリックで暗号化フォルダに設定します。
  3. プロセスアクセス制御の設定
    暗号化フォルダには、PACSソリューションの許可されたプロセスのみがアクセスできるようにプロセスアクセス制御を設定します。
  4. ログと監査の管理
    暗号化されたフォルダにアクセスしたプロセスや暗号化履歴を記録し、監査機能を通じて確認できるようにします。

D.AMO KEをPACSに適用することの優位性

D.AMO KEを適用したPACSは、以下のようなセキュリティ上のメリットがあります。

  1. 暗号化によるデータの機密性の強化
    暗号化状態で画像ファイルが保存されるため、万が一ランサムウェアや内部者による不正なデータ流出が発生した場合でも、内容の閲覧が不可能です。
  2. 強力なプロセスアクセス制御
    アクセス権限をユーザーから実行プロセス単位まで絞り込むことにより、病院の許可されたクライアントPCやPACSソリューションを通じてのみ、暗号化された患者画像ファイルが自動復号されて表示されます。これにより、データの機密性を高め、外部および内部からの不正なアクセスによる、削除や流出を未然に防ぎます。
  3. 運用の効率性
    データの暗号化と復号はシステム内部で自動的に処理されるため、これまでの業務運用プロセスの変更やユーザーへの負担をかけることなくセキュリティを強化し、データ保護対策を導入できます。

まとめ

近年、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増加しており、その手法も高度化・巧妙化しています。特にランサムウェア攻撃や内部者による情報流出など、患者の個人情報や医療画像データの漏えいリスクが大きな課題となっています。このような状況において、医療機関が患者データを安全に管理し、業務の信頼性を確保するためには、即時性かつ実効性のあるセキュリティ体制の構築が不可欠です。

D.AMO KEは、医療機関が必要とする高度なデータセキュリティ対策を効率的に実現するためのソリューションです。PACSシステムをはじめとする医療用システムに組み込むことで、 暗号化、プロセスアクセス制御、運用効率を損なわないセキュリティ管理といった包括的なセキュリティを提供します。

画像ファイル保護は、医療現場におけるセキュリティ対策の中でも特に重要な分野です。X線や施術写真のような個人情報を含むデータを安全に管理することは、患者との信頼を築く上で欠かせません。暗号化やアクセス制御を活用した堅牢なセキュリティ対策を導入することで、患者のプライバシー保護とコンプラアインスへの対応を両立できます。

今後さらに高度化されたサイバー攻撃が予想される中、D.AMO KEの強力な暗号化機能とプロセスアクセス制御機能を使用して、医療機関は一日も早く実効性の高いセキュリティ体系を構築する必要があります。

 

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