情報セキュリティの3要素とは?4つの新要素もわかりやすく解説

情報セキュリティの3要素(CIA)と4つの新要素を解説します。機密性、完全性、可用性の重要性と、真正性、責任追跡性、否認防止、信頼性の概念を説明し、効果的なセキュリティ対策の実施方法を紹介します。

情報セキュリティには、守るべき基本的な3つの柱があります。それが「機密性」「完全性」「可用性」です。これらは長年にわたり、セキュリティ対策の基本として重視されてきました。

しかし近年では、情報技術の進化やサイバー攻撃の複雑化にともない、「真正性」「責任追跡性」「否認防止」「信頼性」という4つの新しい視点が加わり、合計7つの要素として考えられるようになっています。

本記事では、これら7つのセキュリティ要素がどのような意味を持ち、実際にどのように対策へ活かすべきかを、わかりやすく解説します。企業や組織でセキュリティレベルを高めるための実践的なヒントも紹介していきます。

情報セキュリティの3要素とは?

情報セキュリティにおける「3要素」とは、情報を守るうえで最も基本となる考え方です。これらは、情報を安全かつ正確に取り扱うために欠かせない視点です。

この3つの要素は、「機密性」(Confidentiality)、「完全性」(Integrity)、「可用性」(Availability)であり、それぞれの頭文字を取って「CIA」とも呼ばれています。

機密性 (Confidentiality)

機密性とは、情報を「許可された人だけがアクセスできるようにすること」を意味します。つまり、権限のない人が情報を見たり使ったりできないように、適切に保護することが目的です。

たとえば、顧客データや社内資料などの重要な情報が、関係のない第三者の手に渡らないように管理する必要があります。

この機密性が守られていないと、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まり、企業の信頼を失ったり、法的な問題に発展したりするおそれがあります。特に個人情報の場合は、漏えいによって金銭的・精神的な被害が生じることもあり、慎重な取り扱いが求められます。

機密性を確保するためには、いくつかの具体的な対策が有効です。まずは、誰がどの情報にアクセスできるかを明確にし、アクセス権限を適切に設定することが基本となります。

さらに、強力なパスワードを使用し、定期的に変更することで、不正な侵入を防ぐことも重要です。また、情報を暗号化しておけば、万が一外部に流出した場合でも、内容を読み取られる危険性を減らせます。

完全性 (Integrity)

完全性とは、情報が正確で、意図しない変更や破損がない状態を保つことを意味します。たとえば、業務システムに登録した顧客データや売上記録が、第三者の不正な操作やシステムエラーによって勝手に書き換えられたり、削除されたりしないように守ることが重要です。

万が一、こうした情報の改ざんや損失が発生すると、業務の信頼性が損なわれるだけでなく、企業全体の信用にも大きな影響を与えかねません。

完全性を確保するためには、いくつかの対策が有効です。まず、万が一データが破損・消失した場合に備えて、定期的なバックアップを取ることが基本です。また、誰がいつどの情報にアクセスしたかを記録する「アクセスログ」を活用すれば、不正操作が行われた場合にも原因の特定がしやすくなります。

さらに、文書やファイルが正しく作成されたものであることを証明する「デジタル署名」を活用することで、途中で改ざんされていないことを確認できます。

可用性 (Availability)

可用性とは、必要なときにいつでも情報やシステムが使える状態を保つことを指します。たとえば、オンラインショッピングサイトが突然つながらなくなったり、災害時に緊急通報システムが停止してしまったりすると、利用者に大きな支障を与えることになります。

このような事態を防ぐために、安定してサービスを提供できる状態を維持することが、可用性の確保につながります。

可用性を高めるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、システムを「冗長化」することで、1つの機器や回線に障害が起きても、すぐに予備の機器に切り替えてサービスを継続できるようになります。

さらに、ハードウェアやソフトウェアの不具合を未然に防ぐために、定期的な点検やメンテナンスも欠かせません。また、自然災害や大規模障害などの突発的なトラブルに備えて、あらかじめ「災害復旧計画(DRP)」を策定し、万が一のときに迅速な対応ができる体制を整えておくことも重要です。

情報セキュリティの3要素を取り入れた活用方針

情報セキュリティの3要素である「機密性」「完全性」「可用性」をバランスよく取り入れた方針が必要です。

3要素のバランスを適切に保てない状態では、業務効率とセキュリティレベルのバランスが崩れてしまいます。例えば、機密性を過度に重視すると、情報へのアクセスが制限されすぎて業務の効率が低下します。一方、可用性を優先しすぎると、セキュリティリスクが高まる恐れがあります。

追加された4つの要素 

近年は情報セキュリティの3要素に加え、新たに4つの要素も注目されています。それが「真正性(Authenticity)」「責任追跡性(Accountability)」「否認防止(Non-repudiation)」「信頼性(Reliability)」です。

ここでは、これらの4つの要素について解説します。

真正性 (Authenticity)

真正性とは、情報を利用している人や機器が、正しく許可されたものであることを確認できる状態のことを指します。言い換えれば、「この人は本当に本人か?」「この端末は信頼できるものか?」をはっきりさせることが真正性の目的です。

たとえば、オンラインショッピングをする際、本人であることを確認するために、IDとパスワードの入力が求められたり、指紋や顔認証といった生体認証が使われたりするのは、真正性を確保するための対策です。これにより、他人によるなりすましや不正購入を防ぐことができます。

また、デジタル署名を活用することで、電子メールや電子契約書の「送り主が誰か」と「その内容が途中で改ざんされていないか」を確認することができます。これにより、ビジネス上の重要なやり取りでも、相手が本当に信頼できる人物であると証明でき、内容の信頼性も担保されます。

責任追跡性 (Accountability)

責任追跡性とは、誰がいつ・どの情報にアクセスし、どのような操作を行ったかを記録し、その行動をあとから確認できるようにすることを指します。

万が一、不正アクセスやデータの改ざんといった問題が発生した場合でも、この記録が残っていれば、原因を調査し、関係者や責任の所在を明らかにすることができます。

たとえば、病院では職員がどの患者のカルテを閲覧・編集したのかをすべて記録し、不適切な閲覧や情報漏えいを防いでいます。また、銀行でも、従業員がどの顧客の口座情報にアクセスしたのかが詳細に記録され、不正取引や操作ミスの抑止につながっています。

こうした記録の仕組みは「ログ管理」と呼ばれ、情報セキュリティの基本的な対策のひとつです。責任追跡性を高めることで、従業員の意識向上にもつながり、不正行為の抑止効果が期待できます。

また、万が一問題が起きた場合も、原因究明や再発防止策の検討がしやすくなるという利点があります。

否認防止 (Non-repudiation)

否認防止とは、ある行動ややり取りが行われたあとに、「自分はやっていない」「そんな操作はしていない」と言い逃れができないようにする仕組みのことを指します。

つまり、情報のやり取りや操作の記録をきちんと残しておくことで、関与したことをあとから否定できない状態にするという考え方です。

たとえば、電子契約では、契約書にデジタル署名を付けることで、誰が・いつ・どの内容に同意したかが証明できます。この署名があることで、契約当事者が後から「その契約はしていない」と主張することは難しくなります。

また、電子メールでも、送信履歴やサーバ上のログを保存しておけば、送信者が不正な内容を送ったり改ざんしたりした場合にも、その事実を追跡できるようになります。

信頼性 (Reliability)

信頼性とは、システムやデータが常に安定して動作し、想定どおりに機能し続けることを意味します。

たとえば、オンラインバンキングやECサイトのように、多くの人が利用するサービスでは、アクセスが集中しても止まることなく正確に処理が行われる必要があります。利用者からの信頼を得るためには、このような「いつでも正しく動く」ことが非常に重要です。

信頼性を高めるための方法として、よく使われるのが「サーバーの冗長化」や「データのバックアップ体制の整備」です。

冗長化とは、1つのサーバーが故障しても、すぐに別のサーバーに切り替えられる仕組みを用意することです。これにより、システムが突然止まってしまうリスクを大幅に減らせます。

定期的なバックアップも同様に、データの消失や破損が起きた際に速やかに復旧できるようにするための重要な対策です。

また、最初から不具合の起きにくい設計を心がけたり、運用時の監視体制を整えたりすることも、信頼性を保つうえで欠かせません。

たとえば、システムに不具合があったとしても、すぐに通知が届いて対応できるような監視ツールを導入すれば、被害を最小限に抑えることが可能になります。

3要素を高める方法

ここでは、機密性、完全性、可用性のそれぞれの要素を強くするを解説します。

機密性を高める方法

 機密性を高めるには、情報へのアクセス制御とデータ保護が重要です。

データ暗号化

データ暗号化は、情報を第三者が解読できない形式に変換する技術です。特に機密性の高い情報や個人情報を扱う場合、暗号化は効果的です。例えば、ファイルやフォルダの暗号化、通信経路の暗号化(SSL/TLS)、データベースの暗号化などが挙げられます。もしデータが漏えいしても、暗号化されていれば解読は困難になります。

アクセス制御

アクセス制御は、情報へのアクセス権限を適切に管理することで、不正アクセスを防ぐ方法です。具体的には、ユーザー認証、アクセス権限の最小化、ネットワークセグメンテーション(重要な情報を隔離されたネットワークに配置)などが含まれます。これらの対策により、情報へのアクセスを必要な人物のみに制限できます。

完全性を担保する方法

完全性の担保には、データの正確性と一貫性を維持することが重要です。

定期的なバックアップ

定期的にバックアップを取ることで、もしデータの損失や破損が発生しても復元することができます。バックアップの頻度や方法は、データの重要性や更新頻度によって変わります。

例えば、重要なデータは毎日バックアップを取り、クラウドやデータセンターなど複数の場所に分けて保存することが推奨されます。

データの整合性チェック

データの整合性チェックは、情報が正確で一貫性があることを確認する方法です。例えば、「チェックサムの使用」「デジタル署名の検証」「データベースの整合性チェック」などが挙げられます。

可用性を高める方法

 可用性を高めるには、システムやサービス負荷分散、冗長性の確保が効果的です。

負荷分散

膨大なアクセスなどの集中による負荷を軽減する技術が負荷分散です。複数のサーバーやリソースに分散させることで、特定のサーバーに負荷が集中することを防ぎ、システム全体のパフォーマンスと安定性を向上させることができます。

例えば、ロードバランサーを使用して、Webサーバーへのリクエストを複数のサーバーに分散させることで、サービスの応答性を維持し、障害時のリスクを軽減できます。

冗長性の確保 

冗長性の確保は、システムの重要な部分を複製し、一方が故障しても他方が機能を継続できるようにする方法です。例えば、サーバーの冗長化(クラスタリング)、ストレージの冗長化(RAID)、ネットワークの冗長化(複数の回線やスイッチの使用)などが挙げられます。

まとめ

情報セキュリティの3要素「機密性」「完全性」「可用性」は、組織の情報資産を保護するための基本的な考え方です。さらに、「真正性」「責任追跡性」「否認防止」「信頼性」という4つの新しい要素が追加されました。

効果的なセキュリティ対策を実施するには、これらの要素をバランスよく考えていく必要があります。

なお、機密性を高めるための暗号化技術は年々アップデートされています。より高度な保護が必要な場合は、D.AMOのような最新の暗号化ソリューションの導入をおすすめします。

www.pentasecurity.co.jp